2015 Fiscal Year Research-status Report
シリコン系二次元ハニカム結晶の創製と電子物性の解明
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15K13943
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大田 晃生 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10553620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒澤 昌志 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 特任講師 (40715439)
洗平 昌晃 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (20537427)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 二次元結晶 / 電子状態 / シリセン / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコン(Si)およびゲルマニウム(Ge)で構成される二次元結晶(シリセン、ゲルマネン)は、炭素(C)から成る二次元結晶のグラフェンと同様の蜂の巣(ハニカム)構造の原子配列を取ることから非常に特殊な電子状態を有する。本研究では、二次元結晶の成長メカニズムを実験と理論の両面から深耕し、二次元結晶特有の電子物性を発現することを目指す。 平成27年度は、Siで構成される二次元結晶を主たる研究対象とし、これまでに報告例の多い金属上のSi蒸着による二次元結晶の合成方法とは異なる、共晶反応系の金属を用いた層交換成長を利用した二次元結晶の合成を探究した。まず、化学溶液洗浄により表面を水素終端したSi(111)基板上に、厚さ60nmの銀(Ag)薄膜をヘテロエピタキシャル成長した。電子線後方散乱回折像やX線回折より、Σ3粒界などの小角粒界はなく、試料全面で(111)配向していることを確認した。さらに、光電子分光分析より、共晶点以下の熱処理でAg表面にはSi極薄膜が存在することを見いだした。Ag/Ge系でも同様の現象が生じることを明らかにし、この層交換現象は共晶反応系で生じることを合金状態図に基づいて説明できることが分かった。未だ不十分ではあるものの、形成されたSiやGe極薄膜の酸化は厚さ5nmのAlOxキャップ層によりある程度抑制できることも見いだし、熱処理後にAg薄膜やAlOxキャップ層への顕著なSiやGe混入は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Siで構成される二次元結晶を主たる研究対象とし、金属にはSiとの相図において固相領域が極めて小さいAgを選択し、共晶反応系の金属を用いた層交換成長を利用した二次元結晶の合成方法を探求した。水素終端したSi(111)基板上に、真空蒸着により形成したAg薄膜は、電子線後方散乱回折およびX線回折より試料全面で(111)配向が認められることから、ヘテロエピタキシャル成長していることを確認した。放射光施設を利用した硬X線光電子分光分析より、窒素雰囲気中400℃以上の熱処理でAg表面にはSi極薄膜が存在することを見いだした。形成されたSi極薄膜の酸化はAlOxキャップ層によりある程度抑制でき、熱処理後にAgおよびAlOxへのSiやGeの混入は極めて少ないことが分かった。Ag/Ge系でも同様の現象が生じることも確認しており、GeのAg表面の析出量がSiの場合に比べて多いことを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、金属誘起交換成長法により形成したSiやGe薄膜の結晶構造や欠陥構造を走査トンネル顕微鏡やラマン散乱分光、透過型電子顕微鏡などを用いて明らかにする。さらに、大気暴露による二次元結晶の自然酸化を防ぐための高品質な表面保護膜、絶縁膜や金属電極の形成方法、二次元結晶の絶縁性基板上への転写方法を探究する。また、電極や表面保護膜などの異種材料と二次元結晶で構成される界面の化学結合・電子状態、二次元結晶への歪み印加や表面・エッジ修飾などがキャリア輸送特性等の基礎物性に与える影響を実験と理論の両面から精査する。
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Research Products
(6 results)