2015 Fiscal Year Research-status Report
スピン軌道トルクを用いた新規磁化制御方式の研究と3端子磁気メモリ素子への応用
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15K13964
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
深見 俊輔 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (60704492)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スピン軌道トルク / 3端子磁気メモリ素子 / スピン・軌道相互作用 / スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、スピン・軌道相互作用に由来するトルク-スピン軌道トルク-を用いた新しい磁化制御方式の基礎物理を確立し、それを用いた3端子磁気メモリ素子の実用化のための基盤技術を構築することを目的としている。これまでのスピン軌道トルクによる磁化反転方式は、電流方向をX方向と定義したとき、磁化容易軸はY方向、あるいはZ方向を向いていたのに対して、本研究で提案する磁化反転方式においては磁化容易軸はX方向を向く。この方式の動作を実証し、かつ旧方式と比較することでスピン軌道トルク磁化反転の物理の理解を深めることができると期待される。 平成27年度は、(1)シミュレーション環境を構築し、本研究で提案する新方式を実現するための設計指針を明らかにし、(2)材料開発を行い新方式の動作実証を行うための膜構成を構築し、(3)新方式の磁化反転を実現するための素子の作製プロセスを構築して微細加工技術により素子を作製し、(4)測定系を構築して新方式の磁化反転を評価した。その結果、スピン軌道トルクに由来する磁化反転が新方式の構造においても観測することができた。また既存構造の素子も併せて作製・評価し、新構造素子の評価結果と比較することにより、スピン軌道トルク磁化反転の背景にある物理的なメカニズムを明らかにすることができた。これらの結果はNature Nanotechnology誌に論文投稿し、採択、掲載されている。 また閾電流密度を低減する手法として、タングステンを導入した新構造素子を作製して評価したところ、これまで広く用いられていたタンタルを用いた構造と比べて閾電流密度が約3割低減することが分かった。 この他、ナノ秒・サブナノ秒領域での磁化反転の評価を行い、スピン軌道トルク磁化反転が高速での磁化の反転手法として極めて有用であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は平成27年度は、設計指針の検討、材料の開発を行い、素子の基本動作を実証するところまでを計画していたのに対して、実際にはこれらが完了した上でより発展的な材料の導入や、高速領域での磁化反転での評価も進んでおり、当初の計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、平成27年度に立ち上げた素子の作製・評価手法を用いて、引き続きスピン軌道トルク磁化反転の背後にある物理の解明や、素子の動作特性の向上に取り組む。 具体的には、ナノ秒での磁化ダイナミクス、磁化反転エラーレート、素子構造依存性、スケーラビリティなどを明らかにする。また、新しい材料や構造の導入による無磁場での磁化反転動作の実証や、熱安定性の向上にも取り組む。
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