2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K13975
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
永妻 忠夫 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (00452417)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | テラヘルツ / イメージング / タグ |
Outline of Annual Research Achievements |
最近、バーコードのように情報が書き込まれたタグを準備し、それを電波で読み出すだけの機能を持ったものとして、テラヘルツ波(100GHz~10THz)をタグ・リーダのための電磁波として用いる「テラヘルツタグ」が報告されている。これらの情報量は27 bit程度であり、実用のためには蓄積できる情報量を桁違いに増やす必要がある。本研究では、より多くの情報量が期待できる2次元フォトニック結晶スラブを利用した情報タグを提案する。本年度は、提案するテラヘルツタグの原理検証を主たる目的として、600 GHz帯(450GHz~750GHz)においてタグを設計・試作し、以下の成果を得た。 (1)フォトニック結晶タグの設計と試作:電磁界シミュレータを用いて、Si基板上の空孔の大きさと周期を変えることにより、所望の吸収周波数を有するフォトニック結晶構造を設計した。基板厚120 μm、周期200 μmで、円孔半径を変えることで、異なる位置に吸収周波数ピークを持つ4種のフォトニック結晶を、8mm角のサイズで同一基板上に並べた単層タグをSi-MEMSプロセス使って試作した。 (2)試作タグの周波数特性の評価:試作したタグの反射特性の周波数依存性を測定した結果、設計値とよく一致する周波数特性を得ることができ、設計の妥当性と精度を確認できた。 (3)2次元タグの動作検証:反射型2次元イメージングシステム(空間分解能1 mm,取得データ点数25×25)により、各点における受信信号と反射特性との相関係数から、上記の4種の結晶構造の判別を行った結果、境界の±1 mmを除き,フォトニック結晶部分の領域を正しく読み取ることができ、タグとしての動作検証に成功した。 (4)記録密度の向上に関する検討:周波数特性のQ値を高くすることにより、周波数軸上で記録密度を高めるために、円孔に加えてスロット構造を有するタグを設計、試作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
設計・試作した2次元のフォトニック結晶タグを、2次元イメージングシステム(=タグリーダ)により計測することで、所期の原理検証に成功した。そこで、次年度に行う予定であった記録密度の向上に向けた検討を先行して進め、Q値の高い(周波数幅Δfが狭い)タグを設計・試作したが、読み取りができなかった。その原因について、設計、評価の両面から検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の実験結果をベースにして、タグとしての情報記録密度の限界に関する検討を中心に、次年度の研究を次の手順で行う。 (1)タグの周波数幅Δfの最小化:本年度の検討に引き続き、Δfを最小にするためのフォトニック結晶の構造について考察する。 (2)情報ユニットの最小化:どれくらいの周期(結晶のサイズ)があれば、所望の吸収特性を有するタグとして動作可能かについて、主として実験的なアプローチにより解明を行う。その際、タグリーダにおける、テラヘルツ波のビームサイズの影響についても調べる。 (3)タグ積層数の最大化:タグを何枚まで積層して情報を読み出すことができるかについての考察を行うとともに、実際に積層構造のタグを試作し、3次元タグとしての動作を実証する。また、f-θレンズとガルバノスキャナと組み合わせて高速スキャンを行い、タグの読み出し時間の短縮化手法について検討する。 以上の、理論的、実験的検討を通して、従来のテラヘルツタグを2桁以上超える記録密度のタグを実現する。
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Causes of Carryover |
当初、Si基板上の空孔の大きさ、周期、構造等を変えることにより、所望の吸収周波数を有するフォトニック結晶構造を設計し、それをファウンドリ―で試作した後、評価を行うという一連のプロセスを複数回行い、タグとしての性能を改善する予定であった。1回目の試作で、タグとしての所期の動作確認に成功し、吸収特性についても設計値とよく一致した。しかしながら、一部の構造のタグ(Q値の高いもの)において、設計通りに動作しないものがあり、その原因の理論的・実験的究明に多くの時間を費やした。そのため、今年度に行う予定であった2回目以降の試作を取りやめ、次年度に行うこととしたことから、上記の繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上述のとおり、本年度行えなかった試作を、次年度に行うことから、それに伴う経費はそのまま使用する。もともと次年度に行う予定であったタグの試作と、タグの評価のためのシステム(タグリーダ)の開発は、当初予算の枠内で実施する。
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Research Products
(8 results)