2015 Fiscal Year Research-status Report
3状態スマートウィンドウの陰イオン濃度制御による可逆/不可逆切替機構に関する研究
Project/Area Number |
15K13980
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Research Institution | Tokyo Polytechnic University |
Principal Investigator |
内田 孝幸 東京工芸大学, 工学部, 教授 (80203537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
關 成之 仙台高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50449378)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スマートウィンドウ / 銀ナノ粒子 / プラズモン / エレクトロクロミック / 電気化学素子 / 熱遮蔽 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀イオンを含む溶液を対向させた透明導電膜に挟み込んだ構造によって、透明エレクトロクロミック素子を作製した。無バイアスでは透明なこの素子に適切な電圧を印加することで、片側の電極に銀が析出し、鏡状態や黒色状態を呈色することができる。この素子は銀イオンとBrの陰イオンのバランスとる(AgBrの溶解度を小さくする)ことよって、無バイアス時には透明で電圧を印加することによって、電極面で還元された鏡状態となる。この反応は可逆的に生ずることが可能であるが、応用であるスマートウィンドウの観点からすれば、高速に変色することと、状態を固定するという相反する事象を実現することが望まれている。本年度は、その変化(透明~鏡、透明~黒色)といった変化の呈色の機構を主に調べた。鏡状態は銀鏡反応に代表される、金属銀の表示色によって理解できるが、黒色表示は、銀ナノ粒子のプラズモン吸収の帯域が広いことによって起こる。これは、構造色の観点からすれば、銀ナノ粒子の粒径の粒度分布が広いことに起因している。そこで、銀のナノレベルでの核発生や、核成長を、印加バイアス電圧の形状(一定電圧や、2段階電圧、パルス波形など)や電極のナノレベルでの電極の微細形状を変化させることによって銀のナノ粒子の粒度分布を制御した。その結果、銀ナノ粒子の粒度分布を狭くし、その直径を10nm程度から、大きい粒径に変化させることで、それに対応するプラズモン吸収が青~赤に変化する。これに伴って、この素子が示す色はイエロ~マゼンタ~シアンを示した。また、適切な粒度分布とすることで、赤や青にも呈色した。さらにこれらの陰イオン濃度制御のために、これまでのDMSO溶媒以外の様々な溶媒を検討し、IPAを混合した場合、呈色に関わる応答速度が変化した。以上より、初年度の成果として3状態スマートウィンドウの発現機構を銀ナノ粒子のプラズモン吸収から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に記したように、本研究は「銀イオンを含む溶液を対向させた透明導電膜に挟み込んで、透明エレクトロクロミック素子、すなわちスマートウィンドウ」に関するものであり、特に、透明から鏡、または 透明から黒状態に可逆的に変化させることと、必要な時にはその状態を固定化(不可逆化)するための検討である。銀をイオン化する溶媒としてDMSOやIPAなどを用い、また、電極の数十ナノレベルでの表面形状(モルフォロジー)や印加バイアスの波形などを変えることで、銀ナノ粒子の形状や分布また粒度分布を変化することが出来その結果、それらに対応した様々な吸収バンドから多彩な色を構造色として発色することを検証した。これらの知見を基に、さらなる適切な溶媒や、導電性高分子方式についても検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、可逆/不可逆切替機能の方式として、導電性高分子方式について検討中で、アニリン系(ポリアニリン)およびチオフェン系(ポリチオフェン)を取り扱ってみる。前者は褐色の色味が強く、透明性を損なう部分があるが、後者については電着での作製法を検討する。現状では、均質な薄膜を得るのが困難で、一度ポリマー化してから手頃な溶媒で液化させ、ミスト法やスピンコートで展開して被膜を得る方法も視野に入れて検討を進める。また、素子構造としては、これまで対向ギャップ長を固定(0.5mm)としていたが、その間隔の検討も行い、素子の応答性と合わせて検討を行う。
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Causes of Carryover |
概ね予算の執行は計画通りに実施している。次年度使用額を18,395円とした。当初予算の約2%であり、端数に該当する部分を次年度に繰り越したものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度は、研究を遂行のため物品費の割合が多かった。今後、得られつつある研究成果を外部に発信することも視野に入れ、意義あるものとして交付額を執行する。
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