2015 Fiscal Year Research-status Report
特に中間赤外領域を中心とした超広帯域スペクトル計測に基づく植物健康診断法
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15K14000
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
齊藤 保典 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (40135166)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 画像情報 / 中間赤外 / 植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度課題「提案確証実験のための装置試作」を実施した。 1. X線・可視・近赤外・熱画像システムの構築:可視(400~700nm, 580x580pixels)、近赤外(950~1650nm, 256x256pixels)、熱赤外(7.5~13μm,170x170pixels)で動作するカメラを用意し、全てのカメラを 900 mmx600mmの定盤上に配置した。各画像の大きさの不均一性の解消や中心位置の微細決定等、現実的な課題が着実にこなしながら、実験環境を整えた。X線カメラは(エネルギー40keV, 630x630pixels)別構成とした。 2. 中間赤外画像システム構築の基礎実験:中間赤外領域では、常備可能で実用に供するカメラは極めて少ないため、デバイス設定・検出系設計・ソフトウェア作成の全工程での開発を試みた。デバイスには感度2.5~8.0 μmのMCT検出器を選んだ。ペルチェ素子上にスリットを構成し、スリットおよび周辺部からの熱雑音を除去しつつ検出器の視野決定が可能な空間冷却フィルターを製作した。温度は-39~+99℃(分解能1℃)の制御ができた。画像入出系は共焦点光学系とした。入射系に長焦点レンズを使用することで、葉表面上の凹凸変化を抑制する構成とした。出射系では短焦点レンズにより装置の小型化を達成した。画像化は、測定物をX-Yステージにて移動させることにより行った。画像化ソフトウェアも完成した。 3. 試作装置の基礎動作実験:イチョウの葉の各波長域での画像化を試みた。X線・可視・近赤外・熱画像取得は問題なく行われたが、ピクセル大きさの違いによる各画像の分解能の違いが問題となった。中間赤外画像では515x5pixelsの画像化に成功した。ステージ移動時間内の室内温度変化が画像へ重畳することによる、背景と葉の判別の困難さが問題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 平成27年度課題「提案確証実験のための装置試作」がほぼ完成を見たこと:X線・可視・近赤外・熱画像システムは完成し実用の段階にある。中間赤外画像システムはその基本動作が確認され、研究レベルでの使用は保証されたと考えている。 2. 製作したシステムの問題点を明らかにすると共に、解決策を提案し一部は実行に移したこと:X線・可視・近赤外・熱画像システムでは、各カメラのピクセル(検出デバイス一個)の大きさが、画像比較の際に問題となった。中間赤外画像システムでは、長時間計測における環境温度変化の画像への干渉が問題となった。前者は、画像ソフトウェア上でピクセルの大きさの疑似標準化で対応がつく。すでに、一部ソフトウェアの開発に着手している。後者は、差分画像処理ソフトウェアの作成、あるいはチョッパ同期検出方式の導入を検討中である。ソフトウェアについては、やはり一部開発に着手している。 以上の理由により、「おおむね順調に進展している」の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には「環境シミュレーション(温暖化・砂漠化)実験による提案手法有用性実験」の課題を設定している。 1. X線・可視・近赤外・熱画像システムによる植物葉生育関連情報の画像化:ピクセル大きさの疑似標準化画像ソフトウェアを完成させる。X線では葉構造の画像を取得する。可視~近赤外領域では、植物生理情報を担うアントシアニン分子、クロロフィル分子、水分子の吸収スペクトルでの画像化を進める。吸収スペクトルに同期した干渉フィルタを用いる。X線画像では構造情報を、熱画像では生体内温度画像情報を得る。 2. 中間赤外画像システムによる植物葉生育関連情報の画像化:実験室内熱環境変化の画像への干渉を回避する手法(掃印時間の短縮化あるいはチョッパ同期検出法の導入)の検討を急ぐ。中間赤外領域では、植物情報を担うメタン分子、ピネン分子の吸収スペクトルでの画像化を進める。吸収スペクトルに同期した干渉フィルタを用いる。 3. シミュレーション環境下での植物試料作成:生育ストレスを与えた植物試料(広葉樹林を検討中)を準備する、平成26年7月の台風8号による大雨の10~40%水分増加(温暖化)、IPPC報告書に基づく10~30%水分減少(砂漠化)の水分ストレスを想定している。 4. まとめ:設定した吸収波長のストレス条件による変化率と変化率の大きい部位(葉先端・周辺・葉脈等)などの抽出を行う。広帯域スペクトル画像情報に基づく植物生育関連情報の抽出技術の確立と、本技術の適応展開(農業・林業・森林科学・植物生態科学・環境科学等)を検討する。
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