2015 Fiscal Year Research-status Report
セメント系材料のレオロジー挙動の焦点性に基づくビンガム流動特性の実態解明
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15K14011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸 利治 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90251339)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コンクリート / フレッシュ / レオロジー / ビンガム流動 / 塑性粘度 |
Outline of Annual Research Achievements |
回転粘度計を用いてフレッシュモルタルの見かけのせん断速度(X軸)-せん断応力(Y軸)関係を取得し、SP添加率を変化させた場合のこれらの関係を外挿した直線群が、X座標・Y座標とも負である第三象限において焦点を結ぶという規則性と、その焦点位置が回転粘度計のローターの回転数を切り替えてからの経過時間に応じて動的にシフトし、その軌跡が正の傾きを持った線形関係を示すという規則性を発見した。また、回転数を段階的に変化させてセメントペーストの応力時刻歴を測定した結果、測定時の円筒間距離により流動曲線のヒステリシス挙動が異なることが分かった。この挙動の違いは流動場における速度分布の相違に起因すると考え、各種粒子分散系の二重円筒間における速度分布の測定事例を詳細に調査し、既公表データに基づき流動場の特性を詳細に考察した。その結果、粒子分散系の特性として、流動場はせん断流動域と非せん断流動域あるいは不動領域に分かれ、その境界は急であることを確認した。このことは、レオロジーで想定されている単純ずりの仮定は、クリアランスが大きい場合には成立していないことを示している。また、領域の境界では速度分布は0ではない傾きを持ち、これは従来の降伏値を持つモデルでは再現されないことを確認した。また、クリアランスの全域がせん断流動していない場合には、異なるローター速度間で速度分布形が相似となることを明らかにした。さらに、流動速度分布形は冪関数を用いずとも、二次関数で近似できることを明らかにした。このことは、クリアランスが狭くて全域が流動している場合でも、厳密には流動速度分布の線形性の仮定、すなわち単純ずりの仮定は成立していないことを意味している。また、ローターの回転数を変更した後の速度分布は、100秒程度あるいはそれ以上の時間をかけて緩慢に変化することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
回転粘度計を用いたフレッシュセメントペーストの測定として、回転数を増加させる上昇過程の実験を計画的かつ順調に実施してきたが、下降過程の実験も入念に実施する必要が生じたが、追加分の実験を十分に実施することができずに、計画していた実験の一部に遅延が生じ、未使用額が発生した。
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Strategy for Future Research Activity |
SP添加率を変化させたフレッシュモルタルの見かけのせん断速度-せん断応力関係を外挿した直線群が、X座標・Y座標とも負である第三象限において焦点を結ぶという規則性と、その焦点位置が動的にシフトし正の傾きを持った線形関係を示すという規則性を発見したことから、この焦点軌跡とフレッシュモルタルのスランプフロー値・ロート速度値およびフロー500mm通過時間等の特性値とを比較・分析することで、SP種類の特徴を明らかにすることを目的とする。そして、SP種類の相違によるセメント粒子の凝集構造とSP吸着形態の相違を明らかにし、ハンドリングの良否を含むSP種類の特徴を理論的に明らかにし、セメント・コンクリート分野において新たなレオロジー理論を提案する。
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Causes of Carryover |
二重円筒型の回転粘度計を用いてセメントペーストの応力時刻歴の測定において、回転数の降下過程の追加実験の実施と論文投稿が必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加実験費用として152005円、論文投稿費用として30000円、実験作業謝金として40000円を使用予定。
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Research Products
(3 results)