2015 Fiscal Year Research-status Report
鉄筋座屈の起因となるコンクリート部材内部ひび割れの発見と変形性能向上策の検討
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15K14020
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 光 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60242616)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 内部ひび割れ / 鉄筋座屈 / 繰返し荷重 / 変形性能 / 蛍光塗料入り樹脂 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は、以下の2つの項目に関する研究を行った。それぞれの項目に対する研究実績は以下の通りである。 1.繰返し荷重下で鉄筋から進展する内部ひび割れの存在を実験による証明 曲げ破壊型のはり供試体を用いて繰り返し載荷実験を行い、等曲げ区間の内部ひび割れ進展挙動を検討した。内部ひび割れ進展挙動については、ひび割れ誘発ノッチを入れた供試体で、曲げひび割れ位置をコントロールし、ひび割れ位置およびそれ以外の場所での内部ひび割れの確認を行った。その結果、内部ひび割れは曲げひび割れが発生した鉄筋周辺から水平方向に進展することを確認した。また、モルタルやコンクリートを用いた複数の供試体の実験を行い、いずれの供試体でも同様の挙動であり、目視だけでなく蛍光塗料入りの樹脂注入でのひび割れの可視化の結果も踏まえ、目的としたひび割れの存在を実験的に証明できたと考えられる。また、変形量や繰返し回数を変えた実験を行い、どの時点でひび割れが発生するかの確認を行い、鉄筋降伏後比較的早い時期にひび割れが発生することを確認した。さらに、ひび割れ発生要因を調べ、コンクリートと鉄筋の剛性や繰り返し挙動の違いから、ひび割れ位置で局所的に降伏した鉄筋が、繰返し荷重下で塑性変形が残留することが主な要因であるという確証を得た。 2.剛体バネモデルを用いたメゾスケール解析による内部ひび割れの再現 当初は、剛体バネモデルを用い、鉄筋を節までモデル化したメゾスケール解析を予定していたが、モデル化の自由度や計算量が膨大であることから、比較的モデル化がしやすい3次元FEM解析を用いることにした。鉄筋も3次元モデル化したFEM解析から実験同様にひび割れ位置で鉄筋から水平ひび割れの発生が認められる結果を得、解析的にも内部ひび割れの発生を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度の計画で予定していた、「繰返し荷重下で鉄筋から進展する内部ひび割れの存在を実験」は目的通りの実験を実施し、当初予定していた、従来の知見にない内部の水平ひび割れを発見するという目的を達した。 「剛体バネモデルを用いたメゾスケール解析による内部ひび割れの再現」については、剛体バネモデルによるモデル化の自由度や計算量が膨大であることから、比較的モデル化がしやすい3次元FEM解析に用いる手法を変更した。当初の予定を変更したが、FEM解析から実験同様にひび割れ位置で鉄筋から水平ひび割れの発生が認められる結果を得たので、解析的に内部ひび割れの存在を証明するという目的は達した。 予定していた目的は達成できたが、解析手法の変更を行ったことから、「概ね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定通り進んでいるので、予定していた研究実施計画を推進する予定である。 内部ひび割れについては、その発生進展が鉄筋座屈と密接に関係していると予想しているので、その進展を抑えることで、座屈発生を抑え靱性向上が図れるかを実験的に検証する。ひび割れ進展を抑える方法としては鉄筋周辺に金網を配置する方法を考えているが、その他実用的な方法も検討する。 解析的手法としては、3次元FEMを用いることとする。従来は鉄筋まで3次元でモデル化した解析はほとんどされていないが、次世代技術となり得ると考えられるコンクリ-ト構造物のフル3次元モデル化の有効性について当初の目的を超えて検討する。また、数値解析から実験ではできない条件設定を行い、内部ひび割れの発生・進展メカニズムを数値解析的に明らかにする。
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Causes of Carryover |
予算管理上の問題で、支払金額を勘違いしており、差額が生じました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、次年度の予定助成金の約0.6%であり、予定助成金に併せて消耗品などの支出に利用する。
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