2015 Fiscal Year Research-status Report
凍結土-常温土力学のシームレス化に向けた三相系熱土質力学の新たな展開と実証
Project/Area Number |
15K14025
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 聡 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70470127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
所 哲也 苫小牧工業高等専門学校, 環境都市工学科, 助教 (40610457)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 地盤工学 / 凍土 / 土質力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、飽和・不飽和常温土力学において成功を収めた有効応力原理や多元応力記述を拡張し、各種の熱力学的要件と連成調和させる形で、凍結土および非凍結土の挙動をシームレスに扱う合理的な力学記述の提案を試みるものである。その根拠となる実験データを得るために、対象を2物質3相系(土・液相水・固相水)に限定したうえで、一連の熱-圧力連成力学試験および凍結土の物理試験を行った。 まず、核磁気共鳴(NMR)試験を実施し、異なる氷点下温度における凍結粘土中の不凍水分量の同定を行いった。その結果、粘土の密度(先行圧密圧力)に関わらず不凍水分量曲線が一義的に定義できることがわかり、氷点下温度における粘土の凍結時膨張量および密度を計算する基礎データが得られた。これと並行し、新しく開発したひずみ制御・温度制御型の等方凍結三軸圧縮試験装置を用いて、温度・ひずみ速度・拘束圧を変数として27本の凍結粘土試料および10本の非凍結粘土試料の三軸圧縮試験を行った。この装置は拘束圧を付加した状態において、アイスレンズ形成などを防ぐために比較的急速に土試料を凍結できるものであり、原位置で想定される「要素」としての凍結土の生成を再現できるものである。非凍結粘土試料から求めた正規圧縮曲線・限界状態曲線や限界状態強度と、上記の不凍水分曲線から計算される凍結後密度に基づき、凍結粘土試料の限界状態における粒子骨格応力としての有効応力の推定を行い、破壊包絡線を異なる凍結温度・ひずみ速度に対して実験的に求めた。このような状態理論に基づく凍結土の破壊条件の実験による実証は極めて新規的であり、研究代表者が過去に構築した数理モデルを一部肯定するとともに、一部の修正が必要であることを示唆する結果が得られている。この結果は近日中に国際ジャーナルに発表可能な完成度に達している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は研究期間前より具体的な構想があり、また装置についても可能な範囲で準備を進めていたため、研究期間開始とともに比較的スムーズに実験を実施することができた。研究代表者・共同研究者および代表者が指導する博士学生の三者の間で密な連絡を取りながらそれぞれ分担作業を行うことで、ここまでほぼ想定通りのペースで研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は凍結土・非凍結土記述のシームレス化をうたっており、これは凍結・融解の双方向を含む過程の記述を含むものである。初年度はもっぱら凍結挙動に着目して実験・理論実証を行ってきたが、今後は凍結時挙動のさらなる研究と、融解時挙動への理論展開・実証を同時に行うことが望まれる。残り一カ年で両タスクの完成を求めることはやや野心的であり、まずは異なる土試料の試験や、変数幅の拡張を通して初年度に得た凍結時挙動に関する力学理論と実証を大成することを優先する。しかし同時に、融解時挙動の研究にもエフォートを配分し、後続研究の礎となる知見を求める。これを可能にするために、既存の三軸試験装置を改変し、前述のひずみ制御・温度制御型の等方凍結三軸圧縮試験装置と同等の装置を新たに製作することを今年度初頭に検討する。
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Causes of Carryover |
各項目において、当初の見積もり額と実際の価格にわずかな相違があったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
装置に使用予定のセンサーのグレードアップなどにより有効に利用する。
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