2016 Fiscal Year Annual Research Report
Why Isolated Small Settlements in Mountainous Areas Have Planned for Tsunami Affected Residents?
Project/Area Number |
15K14051
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
稲村 肇 東北工業大学, 工学部, 名誉教授 (50168415)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 防災集団移転 / 孤立型高台移転 / 政策決定過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
東日本大震災の被災地で小規模孤立型の高台移転事業が進行している。その多くは震災以前から過疎化、高齢化していた地域であり、集落の継続性には大きな疑問がある。なぜそのような事業が決定されたか?本研究は政策の提案から決定までの議論の経過を追跡し、背景と原因を分析した。主たる結論は以下の通り。①復興構想会議は「復興への提言」を政府は復興の基本方針を掲げた。しかし、実態は御厨、飯尾両教授と霞ヶ関の官僚達が書いたシナリオだった。②建築基準法と防災集団移転促進法の広汎な適用により、膨大な数の計画立案、移転地の取得業務が生じ、十分な検討のない事業が進行した。③復興交付税により市町負担はなくなり、モラルハザードに陥ち入った。④マスコミや世論の事業遅れ非難の合唱が市町を追詰め容易な山地の候補地に向かった。 我が国は、想定外の大災害で法的整備も予算手当も全く準備が出来てなかった。他国の例を見れば、オーストラリアで2011年の東日本大震災とほぼ同時期に発生した大水害の復興にあたった、“クイーンズランド州復興庁”のように組織、人材、資金を集中的に投資できたら現在の状況は大きく変わっていただろう。もし我が国が道州制で、仙台近郊に強力な復興庁が出来ていたら、こうはならなかったかもしれない。国土交通省(特に都市局)も総務省も大規模集団移転で将来に禍根を残す選択肢をとった。いかに有能な霞ヶ関の官僚達でも、このような大災害の経験が無く、遠い東京で活動し、土地勘もない中では、現在以上の選択肢は考えられなかったのであろう。今からやるべきは、東海、東南海、首都圏大地震に備え、以下の準備をすべきと考える。1)強力な復興庁の設立、2)国、県、市町村、国民の責任分担の明確化、3)柔軟な防災集団移転の方法、4)復興計画の策定と指導体制、5)非常時のための土地権利調整等の法整備、6)財源手当・予算配分の方法
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