2016 Fiscal Year Research-status Report
トランスクリプトーム解析による大腸菌の塩耐性獲得機構の解明
Project/Area Number |
15K14055
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Research Institution | 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所 |
Principal Investigator |
真砂 佳史 国際連合大学サステイナビリティ高等研究所, サステイナビリティ高等研究, リサーチフェロー (50507895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐野 大輔 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80550368)
久保田 健吾 東北大学, 工学研究科, 准教授 (80455807)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大腸菌 / 塩 / 水環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:水環境試料から単離した大腸菌が持つ塩耐性関連遺伝子の同定を目的として,次世代シーケンシング法による遺伝子発現解析に供する試料の準備を進めた。昨年度行った現地調査で単離した大腸菌株の中で,高濃度の塩添加培地で増殖し,かつ塩添加液体培地中の増殖速度が速い株を選択した。 手法:2015年8月と10月に行った現地調査で単離した大腸菌株(各月19株,計38株,塩添加クロモカルトコリフォーム寒天培地ES上でコロニーを形成したもの)を10%,20%,および30%の塩化ナトリウムを添加したクロモカルトコリフォーム寒天培地ES上で培養した。次に,増殖が確認された株を塩添加液体培地(塩化ナトリウム濃度:15%)と塩非添加液体培地でそれぞれ培養し,増殖速度を比較した。 結果:37℃,48時間の培養の後,塩添加クロモカルトコリフォーム寒天培地ESで増殖した株は,添加濃度10%の培地では36株(94.7%),同20%の培地では31株(81.6%)であり,昨年度単離した大腸菌株の多くは塩に対する耐性を保有していることが確認された。添加濃度30%の培地ではいずれの株も培養が確認されなかった。次に添加濃度20%の培地上で増殖した31株から6株を選択し,塩添加液体培地と塩非添加液体培地における増殖速度を確認した。その結果,すべての株が塩添加液体培地中で増殖したものの,塩添加培地における増殖速度は非添加培地に比べ著しく遅いことが確認された。したがって,これらの塩耐性株においても,塩の存在は生育に負の影響を与えていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では,今年度までに遺伝子解析による塩耐性遺伝子の同定を完了する予定であった。しかし,研究を進める中で,遺伝子解析の手法を予定していた基本的な手法(DNAマイクロアレイによる部分的発現解析)からより詳細な手法(次世代シーケンシングによる網羅的発現解析)に変更するべきとの考えに至った。この変更により試料の準備や分析委託業者の選定等追加の作業が生じたため,補助事業期間を延長することにした。更なる進展を図るための変更であるが,事業期間が延びたことから,やや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,追加した次世代シーケンシングによる遺伝子解析を完了し,学会や論文による報告も行う。試料の準備は順調に進んでおり,解析は期間内に終了する見込みである。
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Causes of Carryover |
研究で行う遺伝子解析手法を変更することにしたため,解析準備等に時間がかかることから補助事業期間を延長することにした。延長した平成29年度に使用する研究費を確保するため,次年度使用分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用する費用は,上記の遺伝子解析に係る費用(分析委託費等)および成果報告・打ち合わせ費用である。
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