2016 Fiscal Year Research-status Report
パッシブ音響トモグラフィによる協調動作型都市環境センサネットワークの基礎研究
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15K14074
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大嶋 拓也 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (40332647)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | センサネットワーク / 環境計測 / 音響センシング / クロススペクトル法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度に引続き,平成28年度は以下を検討した。 1. 平成27年度には1道路からの道路交通騒音を環境音源として,当該道路の両側に測線を設け,各測線上に設置した2点間の音響伝搬に伴う相関から風速の算出を行った。この音源生成-音響伝搬-相関検出-風速算出の測定プロセスを数理モデル化し,計算機内での再現を試みた。その結果,実測と同様な相関波形が得られた。さらに相関波形から風速を算出し,実測とほぼ同様な算出結果を得た。 2. 道路音源よりも高難易度が予測される一般的な背景環境音場での測定可能性を検討するため,1. のモデルを背景環境音場に適用し,モデル計算を行った。背景環境音場での測定点間方向の相関検出には指向性マイクロホンが有効と考えられたため,道路音源で使用していた無指向生マイクロホンとの比較を行った。結果としては,道路音源の場合と同じ同期加算回数でもピークの信号対雑音比は低い。特に,無指向性マイクロホンでは明瞭な相関のピークが得られ難かった。風速の算出結果は,指向性マイクロホンの方が有効なサンプル数が多かった。また,2乗平均誤差も指向性マイクロホンの方が少なかった。 3. 背景環境音場では相関の得られる音量確保が懸念されることから,付加音源を用いて実測を行い,必要な測線方向の音圧レベルを検討した。環境音量より小さく抑えた付加音源音量とするため,付加音源による音圧レベルを実測とモデル計算の組合わせにより設定する手法を考案し,付加音源音量を環境音に対し-∞,-18,-12,-6 [dB]の4条件を設定した。その結果,付加音源音量が-12[dB]以下では無指向性・指向性マイクロホンともに系統的な風速算出値の測定値に対するずれが見られた。その原因は,相関波形における付加音源によるピークとそれ以外の音によるピークとの癒着とわかった。2乗平均誤差は,指向性マイクロホンが大幅に小さかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度の実績報告で今後の推進方策として掲げた,道路交通騒音場よりも高難易度である背景環境音場への本手法の展開に関して,一定の成果は得られた。また,本測定手法の数理モデルの構築,および当該モデルを用いたコンピュータシミュレーションによる検討,昨年度に研究計画以上の進展として得られた地表面音響特性測定の理論モデルを生かして,さらに背景音量より小音量の付加音源音量設定手法を開発するなど,研究計画以上の進展も得られた。一方で本手法のリアルタイム化は引続き課題となっている。よって,(3)と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
道路交通騒音場と背景環境音場の中間的な段階の音場も様々に考えられることから,本手法の適用可能な音場についてさらなる見極めを進めていく。さらに,指向性マイクロホン,A/Dコンバータ,信号処理および計測制御用のマイクロコントローラなどを用いて本手法のリアルタイム化を進めていく。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に記載の通り,本手法の適用可能音場に関するモデル計算および実測による検討を優先したため,主要課題の一つであるリアルタイム化が遅れている。そのため,リアルタイム化に必要なA/Dコンバータ,マイクロコントローラ,開発に必要な各種計測機器などのハードウエアの調達を見合わせ,次年度に行うこととした。よって,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は,本手法のリアルタイム化に必要なA/Dコンバータ,マイクロコントローラ,開発に必要な各種計測機器などのハードウエアの調達に使用する計画である。
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