2015 Fiscal Year Research-status Report
交通流マルチエージェントシミュレーションと運動量・スカラー拡散CFD技術の融合
Project/Area Number |
15K14077
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷本 潤 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (60227238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
萩島 理 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60294980)
池谷 直樹 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (70628213)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 交通流 / マルチエージェントシミュレーション / Large Eddy Simulatiom |
Outline of Annual Research Achievements |
車両ダイナミクスが都市キャノピー内の運動量,排気ガス等のスカラー拡散に及ぼす影響を高精度に予測評価するために,交通流を自己駆動多粒子系として扱うセルオートマタを基礎とするマルチエージェントシミュレーション(Multi Agent Simulation; MAS)と高精度で時間発展を追跡出来るCFDとして有効なLarge Eddy Simulation(LES)とを有機的に統合した数値予測プラットフォームを構築し,統計物理学と都市気候学との新たな融合領域を開拓する.具体的に,本研究では,現下,異なる学術分野の前線で夫々,研究が進展している2つの予測評価体系を有機的に統合した新たな数値予測プラットフォームを構築することを目指している.乱流効果が卓越する都市キャノピー内の流れ場をオイラー(マクロ)的視点からモデル化しているLESと交通流をラグランジュ(ミクロ)的視点からモデル化しているCAについて,時間スケールの整合性を考慮しながらall-in-oneの予測評価フレームを理論構成する.開発した枠組みを現実問題に適用し,都市キャノピー内の局所的空気環境悪化に関する科学的知見を蓄積する. 初年度であるH27年度においては,基盤となる交通流ダイナミクスモデルとして現実交通流の再現性が証されているRevised Stochastic-NFSモデルとCFD側のLES(Large Eddy Simulation)モデルを接合するプロトコルの構築を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では2年の研究期間において,当初計画時から初年度はプロトタイプモデルのテンプレート構築,最終年度である2年目はモデルの完成と系統的数値実験を予定,もって, (1)都市キャノピー内外のdispersion予測のLESにRevised S-FNS ModelによるCAをカップリングした数値予測プラットフォームの理論構成;CAモデルによる交通流動の高精度・高時間分解能予測フレームをカスケード上部に配置し,個々の車両粒子(エージェント)の時空間情報をone-wayでLESによる都市キャノピー内外の運動量・熱・スカラー拡散予測体系にカップリングするプラットフォームを構築する.その際,1秒程度の前者の時間スケールは後者のそれに比すと大きいので,時空間出力を滑らかに内挿補完するアルゴリズムを差し込む必要がある.結果をvisualとしてのアニメーション出力に対応するようなGUIインターフェイスを併せて開発する. (2)車線変更,右左折など都市内の交通流のデテールが都市キャノピー内の局所的空気質に付与する影響の定量化;予測評価プラットフォームを適用して,ドライバーの運転戦略,車両特性の違いが都市キャノピー内の局所的空気質にどのように提供するかを系統的数値実験により解明し,空室悪化対策に資する社会的方策を提示する. を達成する目途であり,大略そのように進捗した.
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Strategy for Future Research Activity |
構築した数値予測評価プラットフォームを適用して,以下の観点からスーパーコンピュータを用いた,系統的大規模数値実験を行う. 交通密度が都市キャノピー内の局所的汚染物質濃度に及ぼす影響;交通流動は密度により自由相,メタ安定相,高密度相,渋滞相へと相転移し,密度に応じて交通流量(フラックス)と速度は一部で不連続,不可逆的に転位することが知られている.密度を変えることは,流動状態すなわち車両の速度を変え,ひいては車両の加減速度を変えることを通じて,各車両からの汚染物質放散フラックスに大きな影響を付与する.この両者が不可分に影響して都市キャノピー内の局所的濃度の上昇をもたらす.都市キャノピーの幾何形状を変えながら,淀み点における最大汚染物質濃度の特性を詳細に解析する. 様々な運転態度の個性が都市キャノピー内の局所的汚染物質濃度に及ぼす影響;車線変更,右左折,追い越し,信号停車,急減速および急加速などドライバーの運転上の個性が,機械的シアー生成を通じて都市キャノピー内の乱流混合に如何なる影響を与えるか,汚染物質ソースとしての特性にどのような影響を及ぼすかを解析し,都市キャノピー内の汚染物質の局所的濃度上昇に付与するインパクトを定量化する. 以上により,これまで顧みられることのなかった,個々の車両粒子のダイナミクスが都市キャノピー内の局所的空気質悪化に如何なる影響を与えるかを定量的に論じ,望ましい都市環境をデザインする上での基礎的枠組みを構築するとともに,そのための基礎資料を提示する.
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Causes of Carryover |
研究報告と研究打ち合わせのために旅費を計上していたが,初年度である平成27年度は研究結果を報告するまでに至らなかったため,次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の旅費として計上する.
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