2015 Fiscal Year Research-status Report
地域の建設事業者を主体とした仮設建築物における新規技術の適用とその後の展開
Project/Area Number |
15K14081
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Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
渡邊 史郎 国立研究開発法人建築研究所, 住宅・都市研究グループ, 研究員 (70749209)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 博覧会施設 / 適用除外 / リユース / リース契約 / 解体部材の入札システム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、主に博覧会における仮設建築物を対象として、文献調査と関係者への聞取り調査を実施し、(1)博覧会における技術開発の傾向とその変化、(2)対象とした博覧会における会場整備の方針、及び閉会後の再資源化の取組み、(3)選定した仮設建築物の技術的な特徴と完成までの検討内容、の3点について明らかにした。また、東日本大震災の災害対応において実用化された新規工法については、1事例を対象として、設計者と関係者に聞取り調査を実施した。 (1)について、博覧会の公式記録や会場施設に関する技術的資料を収集し、技術開発の傾向を把握した。1990年前半までの博覧会では、新しい構造方法や材料の開発が意欲的になされており、実際に評価機関の評定・大臣認定を取得したものは1990年前半までに偏っていた。2000年以降の博覧会では、環境への配慮が意識されはじめ、撤去建物の再資源化を目指した技術を特徴とする会場施設が多く見られた。 (2)(3)は、5博覧会:2005年愛知万博、2004年浜名湖花博、2001年北九州博、2001年福島博、1990年大阪花博の元博覧会協会関係者(自治体職員を含む)と会場施設の設計を担った設計者への聞取り調査と資料分析に基づいた。5事例中3博覧会では協会主体で会場施設の設計指針を策定していたが、新規技術に関する記述はむしろ限定的であった。実際に建築基準法令における適用除外項目より、むしろコスト削減を意識した結果として仕様の簡素化につながる傾向にあった。 また、2000年以降の博覧会では、再資源化に配慮した施設整備がなされていた。特に仮設材・規格材の使用の推奨、リース契約での発注、解体部材の入札システムの運用など、通常の建設市場では一般的ではないリユースの活性化に向けた取組みがみられた。一方で、これらの取組がどの程度利用に結びついたかは明らかではなく、今後の精査が求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
博覧会関連の調査は当初の計画に比べ、多くの関係者と協力関係を築くことができ、聞取り調査・実地調査も多く実施できた。一方で、収集した文献・資料の分析がまだ十分に進んでおらず、来年度以降の課題である。また、東日本大震災の応急仮設住宅で実用化された新規技術の追跡的な調査も1事例に限られた。
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Strategy for Future Research Activity |
博覧会の調査では、新規技術が適用された事例が想定よりも少なかったため、新規技術の定義を「基準法令で規定を受けない構造方法または材料」から、「一般の建築物には見られない実験的な構法・材料」と改め、リユースを含めた再資源化を目指した新規技術とその関連の仕組みづくりを主な対象として調査を進める。また、平成28年熊本地震の災害対応の一環として整備された仮設建築物にも、新規技術が適用されたことが確認された場合、これを調査対象に含め、当該技術の開発とその後の応用について調査を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
東日本大震災後の新規技術の事例が一つに限られた関係で、現地調査の実施が当初の計画に比べ少なくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後の推進方策にも先述した通り、熊本地震後の仮設建築物における技術開発の事例も調査対象に入れ、昨年度に実施できなかった現地調査を実施する予定である。
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