2016 Fiscal Year Research-status Report
地域の建設事業者を主体とした仮設建築物における新規技術の適用とその後の展開
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15K14081
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Research Institution | Building Research Institute |
Principal Investigator |
渡邊 史郎 国立研究開発法人建築研究所, 住宅・都市研究グループ, 研究員(移行) (70749209)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 応急仮設住宅 / 恒久化 / 再利用 / 初期設定 / 状態遷移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、応急仮設住宅の継続利用に関して、(1)平成24年九州北部豪雨に際して建設され、その後市の単独住宅として継続利用された熊本県・阿蘇市の応急仮設住宅、(2)平成23年東日本大震災に際して建設され、その後払い下げによって解体・移築された岩手県・住田町の応急仮設住宅の2事例を対象として実地調査を行い、供用後の継続利用までの経緯、工事(改修・移築等)の費用・工事内容について把握した。また、上記2事例は、それぞれ現地改修→恒久利用、解体・移築→恒久利用というハードの状態遷移において異なるものとして位置づけられるが、それぞれの課題と実現のために望まれる要件を整理した。 また、平成28年熊本地震後の応急仮設住宅等の建設状況に関して実地調査を行った。木造の仮設住宅に関しては、自治体への聞取り調査に基づき、RC基礎や断熱仕様等これまでの他の災害で供与された木造仮設住宅に比して高い性能が設定された経緯について把握した。このような高い「初期設定値」が仮設住宅に適用された事例は僅少だが、高い居住性が担保される一方で、早期撤去による年当りライフサイクルコストの増大、またプレハブ構法などの他の応急仮設住宅に対する公平性に関する課題が指摘される。 なお、平成28年度までの調査で得られた、博覧会(愛・地球博、北九州博覧祭、うつくしま未来博)の仮設建築物に適用されたリユースに関する新規技術と会場整備の入・契約等の仕組みに関する成果を今年度の国際会議で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対象としていた博覧会の仮設建築物の移設先を特定することが想定以上に困難であったため、今年度以降は応急仮設住宅の継続利用に重点を置いて調査を進めることになったが、阿蘇市の改修事例や住田町の解体・移築の事例に加え、仮設住宅としては著しく高く性能が設定された熊本地震の応急仮設住宅の事例を対象に含めることで、仮設住宅の様々な継続利用のあり方を評価することができた。また、当初の計画どおり、昨年度までの成果を国際会議で発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
応急仮設住宅の継続利用の手法と地域の建設事業者との関係に着目して研究を進める予定である。解体→廃棄、現地改修→恒久利用、解体・移築→恒久利用などのハードの状態遷移のみならず、市町村や居住者などの所有関係にも着目して、それぞれの継続利用のシナリオがどのような条件で相応しいといえるかについて、環境負荷、公益目的性などの点から検討する。さらに、それぞれのシナリオの実現に、地域工務店等の地域住宅生産システムがどのように機能するかについても考察する。
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Causes of Carryover |
対象としていた博覧会施設の解体・移築先の特定が当初の想定に比べ困難であり、所有者や関係した建設事業者等への実地調査の継続が難しくなったため、当該調査費の使用額が著しく限定的であった。また、平成28年熊本地震後の住まいの復興に関連した国の直轄調査が平成28年8月から開始され、当調査の一環として当方が受託コンサルに対して技術指導を行う立場として熊本に出張する機会が増えたことで、本研究に関係する調査を効率よく実施することができた。結果として、本研究課題における熊本に関する当該の調査費を当初の計画より抑えることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
仮設建築物の継続利用のあり方について環境負荷の視点からより精緻に評価するため、来年度から新たに環境システムを専門とする研究者1名を研究分担者として追加し、効率的に本研究を遂行していく予定である。なお、日本学術振興会からは今回の分担者追加に関してすでに承認を得ている。
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Research Products
(1 results)