2015 Fiscal Year Research-status Report
企画から運用までの性能検証手法としての建築トータルコミッショニングの開発
Project/Area Number |
15K14084
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
脇坂 圭一 名古屋大学, 施設・環境計画推進室, 准教授 (70625152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥宮 正哉 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30160815)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ファシリティ・マネジメント(FM) / 建築トータル・コミッショニング(Cx) / 大学キャンパス / 性能検証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、発注者の建築物に対する目標性能を確実に実現するFM(ファシリティ・マネジメント)手法として「建築トータル・コミッショニング(以下、建築トータルCx)」を実証に基づいて開発することを目的とするものである。コミッショニングとは性能検証のことであるが、米国から導入されたコミッショニングは、普及している欧州も含めて、設備に特化したもの、すなわち定量的項目において性能検証することが主である。本研究では、定性的項目としての計画・意匠のほか、構造、BCPをも含めた総合的な項目について性能検証を行う手法として、建築トータルCxを開発しようとするものである。 研究手法については、研究代表者が所属する名古屋大学において、建物建設過程に具体的に建築トータルCxを導入した3つの事例比較を主としながら、Cx業務に関する文献調査、国内、海外の他機関におけるCx導入事例比較を行うものである。 平成28年度は、研究1-1としてCx文献調査、研究1-2としてCx導入事例調査、研究2としてCxを導入した建物の運用段階調査を行った。 その成果として、1)設計・監理業務、コンストラクション・マネジメント業務との比較からCx業務の特徴を明らかにしたこと、2)国立大学法人における事例、民間組織設計事務所における事例、民間コンサルティング企業における事例の比較から建築トータルCxの特徴を明らかにしたこと、3)名古屋大学における具体的なCx導入事例の運用段階についてOPR(企画・設計要件書)の達成状況について明らかにしたこと、があげられる。しかし、当初予定の海外事例調査については未着手のため、平成29年度に実施すると共に、建築トータルCxの普及に向けた適切な検証項目や組織体制等についての提言にまとめるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は、研究1-1としてCx文献調査、研究1-2としてCx導入事例調査、研究2としてCxを導入した建物の運用段階調査を行った。当初予定の海外事例調査について、未着手である。 研究1-1では、①Cx業務、②設計・監理業務、③コンストラクションマネジメント(以下、CM)業務に関する文献を対象として、Cx業務に関する特徴を整理した。Cx業務は発注者支援業務として括ることができ、その主導者はコミッショニング・マネジメントチーム(以下、CMT)であるが、Cx業務は1)CMTが主導的に実施する業務、2)CMTが補完的に支援する業務のほか、3)①②③で競合する業務、4)第三者に確認する業務に大別できた。具体的な項目の比較から、Cx業務と設計・監理業務の競合する項目は少なく、CMも合わせて各職能の役割分担を明確にすることの重要性を指摘した。 研究1-2では、①研究代表者が所属する国立大学法人における建築トータルCxの導入事例、②民間組織設計事務所におけるCxの導入事例、③Cx業務を主とするコンサルティング企業における事例を比較検証した。組織体制について、インハウスCxとして発注者組織の中にCx業務を推進するケース、外部の専門家に確認を仰ぐケース、完全に第3者として業務を行うケース、企画段階または設計段階からCxを導入するケース、建物引き渡し後に業務を終了するケース、以上より整理した。Cx業務としての実施項目について、共通業務として50項目が挙げられ、内訳について「他主体の成果物の査閲」などと整理した。 研究2では、研究代表者、共同研究者が企画段階からCMTとして関与したCx導入事例を取り上げ、Cx業務の初期段階で掲げられたOPR(企画・設計要件書)の目標が達成されているかどうか、運用段階において確認・検証した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、主に以下の3点について研究を進める。 1)名古屋大学において導入した具体的なCx事例として3つの建物(減災館,ITbM,アジア法交流館)における事例比較を行い、施設の用途・性能の違いによるOPRの項目、定量的・定性的性能の表現方法、CMTの体制、関係者間の具体的な業務について整理する。 2)先行するCx事例調査として、①ASHRAE(米,American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers),②AIA(アメリカ建築家協会)、③英国流のCxの歴史がありアジア圏のASHRAE 香港支部、④HKBCxC(香港ビルコミッショニングセンター)、⑤法制化を実施した官庁であるdelfa(英国環境食糧農村地域省)、⑥Cxを業務としている設計事務所であるアラップ社、⑦先行するCx事例としてCIBSE(The Chartered Institution of Building Service Engineers)、⑧Cxの実施が前提の認証システムLEEDを運営するUSGBC(The U.S. Green Building Council,米国グリーンビルディング協会)への資料収集・ヒアリングを行い、建築トータルCxとの比較を行う。 3)1)2)の成果も合わせて、企画から運用までの各段階で設計者・施工者に提出を求めるCx関連文書の内容と要求時期の考察を行い、建築トータルCxとしてのあり方を提示する。OPRに明示された性能検証項目と時期の整理を行い、従来の機械設備に特化したCxに見られた大量の書類作成から普及に向けた簡略化と建物の用途に合わせた性能検証項目のあり方を整理する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に実施予定であった事例調査に未着手のものがあり、次年度未使用額が生じた。特に、海外事例調査について、未着手となったため、額が大きくなった。研究代表者の所属機関が平成28年度末に変わり、年度末の調査予定を組むことが困難であったこと、訪問予定の調査対象先とのコンタクトがスムーズにとれなかったことが、主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は計画的に事例調査を実施する予定である。平成28年度末に共同研究者が調査対象先の一つの関係者と同席する国際会議があり、平成29年度中の訪問を依頼した。他の訪問先についても、順次、コンタクトを取っていく予定である。
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