2016 Fiscal Year Research-status Report
在来産業の近代化と都市形成の対応に関する日中比較研究
Project/Area Number |
15K14094
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤川 昌樹 筑波大学, システム情報系, 教授 (90228974)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 醸造業 / 前店後場 / 矛台 / 紹興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、在来産業の近代化が都市形成に与えた影響に関する仮説、すなわち、在来産業はA:近世には都市・村落双方の中心部において、住・工・商一体の複合的施設を拠点として、周辺村落から原材料の供給を受ける形で比較的小規模に成立した。複数の事業者が経営を行う場合でも、所在する都市・村落それぞれの本来の空間的特徴が大きく変化することはなかったが、B:近代化の過程で市場での競争に対応するべく複数の事業者の経営を統合、事業者も深く関与する形での近代的な都市計画により住・工・商の空間的分離を達成すると共に、旧市街地・旧村落の郊外に中心を移動させつつ空間的にも大規模に展開し、C:最終的には旧市街地・旧集落を含み込む大規模な近代都市を成立せしめ、他地域への拠点の分散化を始めるが、原材料産出地のイメージと一体化された地域ブランドを維持するため、その本拠を移動させることは少なく、現代に至るまで創業の地に存続し続ける傾向がある、との仮説を日本・中国の在来産業、とりわけ醸造業に着目して比較検討するものである。 本年度は、長崎県長崎市、兵庫県篠山市篠山・福住、同県豊岡市豊岡・城崎、青森県八戸市、北海道函館市、山口県柳井市・岩国市における現地調査を実施するとともに、各地で関連する資史料の収集を行った。また、山口県文書館で関連する古文書調査を実施した。以上の調査資料にもとづき、日本の在郷町・城下町における醸造業関係遺構の立地・形態等について知見を得た。 なお、研究成果としては、福岡大学で茨城県石岡市の町並みに関する成果を口頭発表したほか、中国四川省宜賓市を対象として取り上げた論文を執筆し、日本建築学会の論文集に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討により、中国では中華人民共和国建国後、数次にわたる企業統合が大規模に推し進められ、醸造業が巨大化することで企業城下町的性格がより強く発揮されること、これに対し日本では中国ほど巨大化せず小規模にとどまる傾向が強く、中国でいう「前店後場」が保持されることが判明した。 特に今年度は、国内の城下町・在郷町の現地調査を実施することができ、日本の醸造業関連遺構について、新たな知見を得ることができた。具体的には、大規模化に伴い、工場が創業都市から転出する場合でも、創業家の住宅は残り続ける事例が散見されること、一方で大規模に至らず工場・店を閉じるケースでも、住宅としては残り続ける事例が少なくないことである。
|
Strategy for Future Research Activity |
都市構造及び醸造業関連遺構の日中比較研究に今後は注力していきたい。具体的には統合が大規模に行なわれる中国とそうでない日本とで、いかなる都市構造の差が生まれているか、また建築遺構にいかなる差が生まれているかである。現地調査と資料分析によりこれらの課題について今年度は取り組む予定である。 なお、今年度は、天津で開催される東アジア建築史国際会議での研究発表も実施する予定である。
|
Research Products
(4 results)