2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K14102
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
貝沼 亮介 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20202004)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 拡散 / 状態図 / アルミニウム |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)原子ジャンプの起源解明:AlにAu、Re、Wを微量ドープした試料をアーク溶解により作製し、STEMのビームスキャン速度やビーム強度を変えた実験を行い、ドーパントのジャンプ頻度に関する系統的な実験を行った。またその結果を用いて、原子ジャンプが純粋に熱振動に起因するのか否かについて確認した。観察には、既存の走査型透過電子顕微鏡を利用した。Auについては、高温域におけるAl中の不純物拡散データが報告されている。またReやWについては拡散活性化エネルギーに関する理論計算結果が報告されている。そこで、この様な既存の情報と観察結果を比較することで、原子ジャンプの起源について解明した。 (2)原子ジャンプ過程の観察と解析:ジャンプ頻度の追跡に最も適すると考えられるReドープ材について、原子位置を示す全輝点の位置変化を丁寧に追跡し、ジャンプが全隣接サイトに対し等方的か否かを明確にした。ジャンプが空孔拡散機構により生じているとすれば、ジャンプ直後に後ろに残してきた空孔へ再ジャンプする頻度が高いため、ジャンプに異方性が生じる(相関因子)。そこで、実験結果を解析することで、理論的に予測されている相関因子の有無を明らかにし、その値を具体的に見積もった。 (3)析出物固溶度の決定手法の開発:a)AlにAuを適量ドープした試料を作製し、既存の状態図を参考にして溶体化と時効熱処理を行った。その後、析出物の構造を固定した後、STEM原子像における輝点の密度を求め、マトリクスに溶け込むAu濃度(固溶度)を算出した。この時、膜圧はEELSや等厚干渉縞を用いて評価しておいた。b)a)で作製した試料について、電気抵抗の温度依存性を測定し、その変化から合金の固溶度線を決定した。以上のようにSTEMと電気抵抗から決定した溶解度が互いに整合性を持つか比較することで、STEMによる固溶度決定手法の有用性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STEM-HAADFを用いた原子像の観察や、輝点の移動挙動を系統的に調査、またそのジャンプと拡散との関連について考察が出来た。またSTEMと電気抵抗から決定した溶解度が互いに整合性を持つか比較することで、STEMによる固溶度決定手法の有用性を明らかにすることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度と同様にジャンプ頻度の追跡に最も適すると考えられるReドープ材について、原子位置を示す全輝点の位置変化を丁寧に追跡し、ジャンプが全隣接サイトに対し等方的か否かを明確にする。ジャンプが空孔拡散機構により生じているとすれば、ジャンプ直後に後ろに残してきた空孔へ再ジャンプする頻度が高いため、ジャンプに異方性が生じる(相関因子)。そこで、実験結果を解析することで、理論的に予測されている相関因子の有無を明らかにし、その値を具体的に見積もる。 さらにAlにAuを適量ドープした試料を作製し、既存の状態図を参考にして溶体化と時効熱処理を行う。その後、析出物の構造を同定した後、STEM原子像における輝点の密度を求め、マトリクスに溶け込むAu濃度(固溶度)を算出する。この時、膜厚はEELSや等圧干渉縞を用いて評価しておく。b)a)で作製した試料について、電気抵抗の温度依存性を測定し、その変化から合金の固溶度線を決定する。以上のようにSTEMと電気抵抗から決定した溶解度が互いに整合性を持つか比較することで、STEMによる固溶度決定手法の有用性を明らかにする。またAlに時効で析出が生じる程度の適量のAuをドープした合金を作製し、高温で溶体化した単相試料をSTEM観察する。Al中のAu原子は盛んにジャンプするので、その場観察により核生成過程を観察できる可能性がある。もし、観察できない場合には、加熱ホルダーで昇温して観察する。また、低温時効により予め析出させたGPゾーンを観察しながら加熱ホルダーで昇温し、析出物の消滅過程を観察することも試みる。
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Causes of Carryover |
実験のための消耗品が当初の予定より少なくて済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、実験のための消耗品(透明石英管)の購入を予定している。
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