2015 Fiscal Year Research-status Report
光学フォノンに由来する超電導材料のためのペロブスカイト型水素化物の超高圧合成
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15K14105
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
亀川 厚則 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90292242)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
Mele Paolo 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70608504)
馬渡 康輝 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40422000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水素化物 / 高圧合成 / 超電導 |
Outline of Annual Research Achievements |
光学フォノンを起源とするTc~100 K級の高温超伝導の実現に挑戦するために、本研究はGPa(ギガパスカル)オーダーの超高圧合成法により、新しい超伝導水素化物の創出を目的とする。 超高圧合成法は、元素や化合物の融点上昇、原子半径の減少など常圧下とは異なる現象を利用し、従来にはない合成反応によって状態図にはない新しい化合物が数多く得られている。高い超電導転移温度が予測されているペロブスカイト系水素化物ABH3-δの超電導発現のキーは、水素含有量3-δをいかに化学量論組成の3に近づけるか?であり、GPaオーダーの高化学ポテンシャル水素処理を実現する超高圧合成法は大きな期待が持てる。研究提案者らはこれまでにMgやLi系などにおいて32の新規水素化物と10以上の新規金属間化合物の合成に成功するなど、超高圧合成法により新規物質を創出してきた。 本研究では様々なペロブスカイト型水素化合物を中心に超高圧合成する。まずは水素との親和性の高いPdを含む系から着手するが、研究の進展に応じて本研究で開発された水素化物についてPdをNiなど他の元素に置き換えるなどして、元素選択の幅を開拓して物質設計を行った。 今年度はPd-AE-H系の超高圧合成 (AE = Mg, Ba) の探索を行った。その結果、Pd-Mg系については、新規水素化物は合成されなかったが、Pd-Ba系においては新規水素化物が合成された。この新規水素化物は正方晶系の結晶構造 (BaPdH1.4, 格子定数 a = 0.39972(2) nm, c = 0.41925(2) nm, R因子 RB = 7.940 %, RF = 6.765 %) と見積もられた。収束の程度を表すR因子はそれぞれRwp = 15.009 %, Rp = 9.017 %, Re = 2.974 %, S = 5.0463であった。また、超電導遷移は観察されず、パウリ常磁性を有すると判断された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Pd-Ba系新規水素化物探索の為に、水素源を用いて5 GPa、873 K、8 hの条件でPd-x mol%BaH2 (x = 25-75) 組成について高圧合成を行った。x = 25-50の試料において未同定相、x = 33-75の試料において正方晶系の結晶構造を有する未同定相 (P4/mmm (No. 123)) が観察された。正方晶系の結晶構造を有する未同定相は、x=50の組成においてほぼ単相でえられることが分かったため、Pd-50 mol%BaH2試料のTG-DTA-TDSによる熱分析を行った。TDS測定において383 K付近、505 K付近および580 K付近からH2のガス放出スペクトルが観察された。DTAの結果より、それぞれの反応は吸熱反応であった。TGの結果より、重量減少はそれぞれ0.29 mass%、0.22 mass%および0.07 mass%であり、全体では0.58 mass%であった。出発原料 (Pd-50 mol%BaH2) の水素含有量は0.82 mass%であり、高圧合成後の試料では水素含有量が減少していることが分かった。得られた正方晶系の結晶構造を有する未同定相は水素を含む新規水素化物であることが示唆された。 この試料についてシンクロトロン放射光によるX線回折測定を行い、得られた結果についてRietveld解析を行った。正方晶系 (P4/mmm (No. 123), Prototype AuCu-type) の結晶構造とし、AuサイトにPd、CuサイトにはBaを置換した。水素位置は水素含有量を考慮し四面体サイトの1bサイトに占有率1および2fサイトに占有率0.2とし精密化を行った結果、新規水素化物は正方晶系の結晶構造 (BaPdH1.4, 格子定数 a = 0.39972(2) nm, c = 0.41925(2) nm, R因子 RB = 7.940 %, RF = 6.765 %) と見積もられた。収束の程度を表すR因子はそれぞれRwp = 15.009 %, Rp = 9.017 %, Re = 2.974 %, S = 5.0463であった。高圧合成された新規水素化物BaPdH1.4のSQUIDによる低磁場での磁気測定の結果および高磁場での磁気測定の結果、超電導遷移は観察されず、パウリ常磁性を有すると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続きPd系水素化物の高圧合成を行う。具体的には、Pd-AM-H系の超高圧合成 (AM = Li, Na, K) を行い、新規水素化物が合成された試料については、磁気測定を行い超電導発現の有無を調査する。
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Causes of Carryover |
分担金において、当初計画の予想より新規水素化物相が早く発見されたため、試料評価に研究の重点を置いたため、使用する原料試薬類の節減ができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
一部は分担者の馬渡が国際学会への招待講演するための参加費として支弁する。また昨年度に引き続き、合成、探索実験を行うため、今後も原料などを調達するなど予定があり、それに支弁される予定である。
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