2015 Fiscal Year Research-status Report
孤立クラスターにおける結合転換の確立とボレンの創製
Project/Area Number |
15K14106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 薫 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (30169924)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分子軌道計算 / 金属結合クラスター / 液体ボロン / コンプトン散乱 / 共有結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで我々は、Al系およびB系固体中の正20面体クラスターにおいて、「金属結合-共有結合転換」が起こることを提案し、実験と計算により、この概念を確立してきた。Si、Al、B等の孤立クラスターにおける「金属結合-共有結合転換」や「π結合-σ結合転換」の存在を提案し、確立することを目的とした。 平成27年度の実施計画として、1)第一原理計算によるクラスターの結合性と安定性の評価を行い、併せて本研究目的と関連の深い、2)液体ボロンの結合状態の解析も行った。下記に、それぞれの研究成果について記述する。 1)計算プログラムとしてGaussianを用い、基底関数は6-31G(d)または6-311+G(d)を、汎関数はB3LYPまたはPBE0を使った。クラスターの軌道エネルギーと比べる、金属結合クラスターの良い近似と考えられるWood-Saxonポテンシャルにおける電子準位を計算するため、球対称ポテンシャルにおける3次元シュレディンガー方程式を、極座標形式で計算するプログラムを作成した。典型的な金属結合クラスターであるAl13-のクラスター軌道と合うように、ポテンシャルのパラメーターを調整中である。 2)液体ボロンは融点が2000℃を超えるため、ルツボを使って溶かすことは難しい。宇宙技術として開発された靜電浮遊法を使って、液体ボロンを空中に静止させ、軌道放射光(SPring-8)を使ってコンプトン散乱実験を行った結果を解析した。その結果、液体シリコン中に残っている共有結合が17%であるのに対して、液体ボロン中には66%もの共有結合が残っていることが明らかになった。シリコンの場合、固体中の4配位のsp3共有結合は、液体中で配位数が大幅に増えることにより、大部分は金属結合に転換する。一方、固体ボロン中の配位数は6配位から9配位で、液体でも配位数はあまり増えず、共有結合が残ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
「1)第一原理計算によるクラスターの結合性と安定性の評価」に関しては、概ね順調に計算プログラムの作成が終わり、分子軌道エネルギーとの比較を行いつつある。一方、「2)液体ボロンの結合状態の解析」に関しては、予想外に解析が進み、大変興味深い結果が得られ、Physical Review Letters誌に、論文が掲載されたためである。この成果は、日経産業新聞や科学新聞等で報道され、東北大学 多元物質科学研究所 新機能無機物質探索研究センターのシンポジウムにも招待された。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「1)第一原理計算によるクラスターの結合性と安定性の評価」に関しては、作成したプログラムで計算したWood-Saxonポテンシャルにおける電子準位と、各クラスターの分子軌道エネルギーを比較することにより、結合性と安定性の評価を行う。さらに、四重極イオントラップを使い、水素化Alクラスターの創製を行う。また、固体表面上のBの一原子層(ボレン)の創製について検討を行う。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Visualizing the Mixed Bonding Properties of Liquid Boron with High-Resolution X-Ray Compton Scattering2015
Author(s)
J. T. Okada, P.H.-L. Sit, Y. Watanabe, B. Barbiellini, T. Ishikawa, Y.J. Wang, M. Itou, Y. Sakurai, A. Bansil, R. Ishikawa, M. Hamaishi, P.-F. Paradis, K. Kimura, T. Ishikawa, and S. Nanao
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Journal Title
Physical Review Letters
Volume: 114
Pages: 177401-1-5
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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