2015 Fiscal Year Research-status Report
多元的電子顕微鏡分光と非弾性散乱計算による熱電材料結晶の局所原子・電子構造解析
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15K14108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 一厳 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (00372532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大塚 真弘 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60646529)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 2次元ビームロッキング / 電子線エネルギー損失分光 / エネルギー分散型X線分光 / 電子非弾性散乱断面積計算 / 熱振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,透過電子顕微鏡(TEM)において,2次元入射ビームロッキングして同時計測した電子線エネルギー損失分光(EELS)/特性X線分光(EDX)データを用い,①電子チャネリング効果による結晶サイトごとの電子状態 ②原子位置の統計ゆらぎ の2点について堅牢な定量解析法を開発することである.カゴ状構造をもつ熱電材料候補結晶を総合的に分析し,マクロな熱・電子輸送を担う電子・原子論的要因を究明し合理的な材料設計指針を得る.その鍵となるのは,原子振動励起および弾性散乱を動力学的に取り入れたEELS/EDX計算の共通プラットフォームの確立である.多元的非弾性散乱計算と実験による,結晶電子/原子構造を階層的に結びつけた新たな熱電材料分析を開拓する. 2次元ビームロッキングでEDXのみならずEELSもロッキングパターンが測定できることを実験的に確認した.EDXを用いた結晶サイトごとの占有率の定量の応用として,M型フェライトにドープされたCoのサイト占有率を分析した.実験ロッキングパターンにシミュレーションをフィッテイングすることでCoのサイト占有率を算出した.その占有の傾向は,第一原理計算での固溶エネルギーでの安定性の序列と概ね対応した. また,2次元のビーム傾斜ではなく,特定方向の1次元傾斜において,EELSとEDXを同時計測し,Li2次電池正極候補材のMnの電子状態・占有状態をサイトごとに分析した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EDXにおいて,2次元ビームロッキングパターンからサイト占有率を決める分析法は,EDXのピークが重畳するなど,特定の例外を除いて,高精度に動作できており,いくつかの応用例を今後も示すことが期待される.一方,EELSにおいては,EDXに比べて非弾性散乱のエネルギーが小さいため,ビームロッキングパターンがデフューズになることが実験的に示された.このため,EELSのロッキングパターンは,測定限界を把握して有効に活用する必要がある. 電子チャネリングを用いたロッキングパターンによる材料分析としては,2件の成果を挙げており,熱振動の分析にまで進展していないものの,概ね順調であると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの応用と基礎が錯そうした進展を一旦リセットし,主として理論計算を拡充することを優先し,熱的物性について2次元ロッキングパターンから実験的情報を得ることを目的として仕切りなおす.具体的には,以下の方策で進める:1) フローズンフォノンによる非弾性散乱ロッキングパターンの理論計算.2) 第一原理フォノン計算と高速電子波の非弾性散乱の組み合わせによるロッキングパターンの提案3) 新奇な熱的物性を示す化合物におけるロッキングパターン予想の網羅的取得(スクリーニング)4) 有意な信号パターンの獲得が期待できる材料において実験を実施.5) 熱電材料において,4)の手法が応用できるか検討し,結論を下す.
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Research Products
(4 results)