2015 Fiscal Year Research-status Report
極限的2次元構造を有する金属酸化物単結晶ナノシート合成プロセスの開拓
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15K14118
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
勝又 健一 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 准教授 (70550242)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イオン液体 / イオノサーマル / ナノプレート / ジルコニア |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 塩素系イオン液体を用いてジルコニア形態制御を試みた。イオノサーマル処理後ではロッド状の粒子が規則正しく配列し前駆体が得られ、焼成することでジルコニアを得ることができた。また、イオン液体に水を加えることで直接ジルコニアを得ることができ、イオン液体の側鎖が長い場合において立方晶、正方晶が得られることがわかった。 2. フッ素系イオン液体を用いイオノサーマル処理を行った。ヘキサメチレンテトラミンを用いてイオノサーマル処理を行うとNH4Zr2F9のプレートが得られ、イオノサーマル処理温度や処理時間を変化させることでプレートの形を制御できることがわかった。また、NH4Fを用いた場合では厚みのあるプレートNH4Zr2F9が得られることがわかった。 3. エチレングリコールをイオン液体に入れイオノサーマル処理を行うことで(NH4)3ZrF7が得られ、イオノサーマル処理時間24 hでは八面体、48 hではロッドと丸い粒子が得られた。さらに、イオン液体とエチレングリコールの比率を変化させることで初期では立方体であるが頂点が溶け出し、八面体に変化し、その後八面体の面から繊維状粒子が析出し成長していくことでロッドが形成されるモデルを提案することができた。 4. 前駆体(NH4ZrF9)を400, 500, 600, 700, 800oCと温度を変化させ焼成してジルコニアを作製した。UV-vis, XPS, FT-IRなどの解析を行った結果、UV-Visから長波長の光を吸収できること、XPSからは結晶内にフッ素がドープされていること、FT-IRからZr-OHの結合が存在することがわかった。イオノサーマル法によりジルコニアの形態制御は可能であることが分かり、形態制御だけでなく表面状態も制御できる可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者自身の異動(H27年6月1日付けで異動)と新しい実験室の立ち上げに伴い研究実施時間が足りず予定よりも研究が遅れている。次年度は研究員を雇用することで、遅れを取り戻し、当初の予定通りに研究を遂行できるように対応する。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 作製したジルコニアナノプレートについて、X線回折装置、可視・紫外ラマン分光、X線光電子分光法、X線吸収微細構造分析、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡で構造解析を行い、ICP発光分光分析で化学組成を決定する。 2. 上記の構造解析において、1枚の単層金属酸化物ナノシートが必要となる。得られるシート状の粉末を単層ナノシートに剥離または分散する手法として、極性(水または有機溶媒)または非極性溶媒中に懸濁させて超音波処理する。シートが破壊されないように超音波の周波数と処理時間の条件を見つけ出す。 3. ナノプレート、特に1枚の単層ナノプレートはバルク体と比較してその特異な構造に起因される新しい物性が発現している可能性が高い。原子間力顕微鏡(AFM)により表面微構造(表面粗さ)、ケルビンフォース顕微鏡(KFM)により表面電位や電子伝導性を測定し、結晶構造の情報を踏まえて、それら物性の異方性やバルク体との違いについて明らかにする。また、ナノプレートを階層的に構築して膜を作製し、誘電性、圧電性、触媒特性(光触媒や排ガス浄化触媒)に与える効果について明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究代表者が研究実施期間に異動したことと、異動先の研究実施建物内に当初購入予定であった定温恒温乾燥器とロータリーエバポレーターが備えられていたため、購入を取り止めた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入予定であった定温恒温乾燥器とロータリーエバポレーターの購入を取り止めて、研究員の雇用費に充てることで、遅れているスケジュールを取り戻し、当初の予定通りに研究を遂行する。
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