2016 Fiscal Year Research-status Report
オリエンテッドアタッチメントによる結晶成長の解明とナノ材料合成への応用
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15K14129
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
今井 宏明 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70255595)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 結晶成長 / 自己組織化 / 自己集合 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
数ナノメートルの小さなユニットが配向して連結していく「オリエンテッドアタッチメント」によって結晶が成長するという現象が報告されている。本研究では、ナノ粒子のオリエンテッドアタチメント現象を、特定の媒質系を用いて自在に発現・制御し、そのプロセスの詳細な観測から理論を構築するとともに、多様な物質系における任意のサイズ・形状・サイトのオリエンテッドアタッチメントによる結晶材料合成プロセスを発展させることを目的とする。平成28年度は以下の3点について取り組み、成果が得られている。 (1) オリエンテッドアタッチメント現象の制御性を発展させるために、酸化マンガンナノブロックの移流集積における集積速度の関与を検討した。ナノブロックの配列環境の制御によって集積速度を小さくすると、これまでよりもナノブロックが稠密に充填した2次元配列が得られた。これは、集積条件によって配列構造のコントロールが可能であることを示す知見である。 (2) これまでに酸化マンガンと二酸化チタンのナノブロックの合成に成功しているが、本年度にはさらに多様な物質系への応用の一つとして、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ストロンチウムドープチタン酸バリウム、サマリウムドープ酸化セリウム、白金、パラジウムなどの矩形ナノブロックの効率的な合成に成功した。これによって、多様な集積構造の形成に向けて多種のナノブロックのライブラリーが構築できると考えられる。 (3)これまでに、カルサイト型炭酸カルシウムナノブロックを水酸化カルシウムの炭酸化によって合成し、c軸方向の一次元配列が生じることを見出している。今年度は、配列環境の制御によって、カルサイトナノブロックの三次元的な配向集積が生じることを明らかにするとともに、新たに{104}面を介した配向集積と可逆的な開裂現象を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度における成果とは、(1)ナノブロックの配列環境の制御によるオリエンテッドアタッチメントによる稠密に充填した2次元配列の形成、(2)多様な物質系(チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、ストロンチウムドープチタン酸バリウム、サマリウムドープ酸化セリウム、白金、パラジウム)の矩形ナノブロックの効率的な合成、(3)カルサイトナノブロックの三次元的な配向集積および{104}面を介した配向集積と可逆的な開裂現象の発見、という3点である。これらの成果は、集積条件によってオリエンテッドアタッチメントによる配列構造のコントロールが可能であること、多様な集積構造の形成に向けて多種のナノブロックのライブラリーが構築できることを示している。このような、酸化物・金属・炭酸塩系においてナノブロックの合成条件を明らかにすること、および環境設定によって配向した配列現象が普遍的に見出されることは、多様な物質系におけるオリエントアタッチメント現象の制御の進展に対して大きな知見を与えるものである。すなわち、これらの成果から、当初に計画した多様な物質系におけるオリエントアタッチメント現象の制御という目的に対して研究がおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、多様なナノブロックの合成条件を明らかにするとともに、環境設定によって配向した配列現象が普遍的に見出されることを示し、多様な物質系におけるオリエントアタッチメント現象が見出されている。そこで本研究の第三段階では、特に制御が容易であり、バイオミネラルとの関連性が深いカルサイト型炭酸カルシウムナノブロックに注目し、ナノブロックの形成過程とオリエンテッドアタッチメントによる集積過程およびその開裂過程を詳細に検討する。ここで得られた知見をもとに、非水媒質系におけるオリエンテッドアタッチメントによるマクロな構造体の構築へとその特性解析をおこなうことで、制御されたオリエンテッドアタッチメント現象の応用の可能性を追求する。ここでは特にバイオミネラルに類似した配向構造に基づく機械的性質に着目し、力学特性などを解析する予定である。さらに、これまでに得られた多様な物質系のナノブロック、例えば、チタン酸バリウムやに参加セリウムについても同様のコンセプトで検討を進め、オリエンテッドアタッチメント現象を利用したマクロな結晶成長技術の獲得と応用を目指す。
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Causes of Carryover |
当初の予定では27-28年度に、多様な物質系において合成研究を目指して試薬や装置類の調達のために物品費を確保していた。しかし、手持ちの試薬と器具を最大限に活用して最低限の試薬と器具類の調達によって前述のような大きな成果を得ることが可能であった。また、ナノブロックは一度の合成により解析に必要な量を確保でき、その後の解析における費用が当初よりも節約できたため、物品費使用額は予定よりも少額となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度未使用額については、29年度において、配列のための器具類や解析のための装置類の消耗品や使用料などに物品費およびその他費用への支出が予定されている。特に、構造の高度な解析や特性の解析には、特殊な消耗品や高額な機器使用料が見込まれており、本研究の最終年年度には必要な費用となると考えられる。
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Research Products
(17 results)