2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14137
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 裕 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00292243)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 摩擦攪拌接合 / 入熱 / カロリメトリー法 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶接において「被接合材への入熱」は品質管理上、極めて重要な因子であるが、摩擦攪拌接合(FSW)では全く明らかにされておらず、信頼できる指標がない。本研究では、FSW における「被接合材への入熱」をカロリメトリー法により実測し、接合因子(接合条件、被接合材、ツールの物性等)から構成された実験式を得るとともに、入熱と接合品質(攪拌部のミクロ組織・諸特性)との関連性を系統的に明らかにすることを目的としている。また、得られた結果から、FSW 過程での被接合材/接合ツールへの熱分配、入熱や接合品質に及ぼす個々の接合因子の寄与度などに関する基礎知見の取得を試みる。平成27年度に得られた成果を以下に記す。 カロリメトリー法を用いた入熱測定法の妥当性を検証した。入熱測定用治具を試作して、5083アルミニウム合金のFSW過程における被接合材、裏当て材、溶媒の温度履歴を熱電対にて計測し、接合後数分で全てが同一温度に収束することを確認した。また、同一の入熱測定用治具を用いて、5083アルミニウム合金のアーク溶接過程での入熱を実測し、一般に知られるアーク溶接の入熱式で計算される入熱を比較したところ、絶対値は異なるものの両者はよい直線関係を示すことを明らかにした。5083アルミニウム合金のFSWを種々の接合条件下で実施する過程で、主軸回転モータ出力と被接合材への入熱を実測した。主軸回転モータの出力から計算されるモータの総仕事のうち、被接合材への入熱に分配されるのは20~40%であり、入熱が高くなる条件ほど分配率は減少することが明らかとなった。また、被接合材への入熱は、ツール回転速度、ショルダ径ととも増加する一方、接合速度の増加とともに減少した。これら接合因子から成る入熱の実験式を重回帰分析により求めた結果、入熱に対する接合因子の影響度は回転速度、ショルダ径、接合速度の順に増加することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究調書では種々のアルミニウム合金に対する入熱測定を完了する予定にしていたが、若干やり残したことがある一方、5083アルミニウム合金に対しては平成28年度に実施予定だった入熱の実験式構築と基礎現象との関連性の議論までできたため、全体としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も研究調書に記載した項目どおりに実施予定である。すなわち、種々の材料に対する入熱測定結果を用いて、入熱の実験式を構築するとともに、基礎現象との関連性、モータ総仕事の分配などに関する基礎検討行った後、攪拌部のミクロ組織や機械的特性などの接合品質と入熱の関係を検討し、総括する。
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Causes of Carryover |
初年度に種々のアルミニウム合金に対する入熱測定を実施する予定であったが、実験によるデータベースの確立よりもデータ解析に注力して、実験式の構築と基礎現象との関連性の議論を行ったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は平成27年度に実施できなった実験を遂行するとともに、研究計画に記載したすべての項目を実施予定であるため、当初の予算計上のとおり使用する予定である。
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