2015 Fiscal Year Research-status Report
非平衡反応を用いた新規単結晶成長法と多次元単結晶の作製
Project/Area Number |
15K14141
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 貴宏 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (50400429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越崎 直人 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40344197)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レーザープロセッシング / 表面処理 / 組織観察 / 球状粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,液体中に浸漬した多結晶バルク物質へのパルスレーザー照射による非平衡な加熱・冷却プロセスを用いた新規単結晶成長手法の基礎を確立し,同手法により多次元単結晶を作製することを目的としている.液体中に分散したナノ粒子コロイドにナノ秒パルスレーザー光を特定のエネルギー密度条件で照射することで比較的粒径の揃った“単結晶”サブミクロン球状粒子が形成される.このプロセスは液中レーザー溶融法とよばれ,特異な粒子の形成機構はコロイド溶液中への短パルスエネルギー照射によるナノ粒子の溶融とその後の粒子内部への非平衡な加熱・冷却過程によるものであるとされている.一方,原理的には同手法を多結晶バルク物質に応用した場合にも同様に表面から内部へと単結晶化が進行するものと期待され,レーザー照射による多結晶体の単結晶化が期待される.本年度は液体中に浸漬したバルク多結晶へのレーザー照射機構を製作するとともに,液中レーザー溶融法によるサブミクロン球状粒子の結晶成長機構を解明することを目的に,銀サブミクロン球状粒子を対象とした電子後方散乱回折(EBSD)を用いた内部結晶構造解析を行った.サブミクロンサイズの試料をEBSDで評価するためには,試料を固定する基板に導電性ならびに熱伝導特性に優れ,かつ回折がないものが望ましいが,本研究ではバルク金属ガラスを基板として用いることで粒子からの後方散乱により結晶構造の評価を行うことに世界で初めて成功した.また,レーザー照射時間を変えた試料を同手法により評価することで,サブミクロン球状粒子の内部結晶構造はレーザー照射時間の経過とともに成長していることが確認されたが,一方で球状粒子の粒径が一定となると粒子を構成する結晶粒に変化が見られないことがわかった.ここで得られた成果をもとにバルク多結晶の単結晶化を試みる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は液中レーザー溶融法により作製したサブミクロン球状粒子の内部構造の評価手法を確立するとともに,これまで明らかとなっていなかった粒子形成に伴う結晶成長機構について検討を行った.レーザー照射に伴う粒子の溶融・融合反応を経た結晶粒の成長現象について初めて明らかにするとともに,照射レーザーフルエンスに応じた粒子サイズに成長したのちにはその後のレーザー照射において粒子内部の結晶粒にも変化が見られないことがわかった.このことはバルク多結晶に応用した場合にも結晶粒サイズが一定の大きさになったのちにはその後変化が見られないという可能性を示唆した結果であると言える.一方,体中に浸漬したバルク多結晶へのレーザー照射機構も製作済みであり,今後はサブミクロン球状粒子の構造解析と並行してバルク物質へのレーザー照射も行う.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた成果をもとに,まずは液体中に浸漬した多結晶シリコン板を対象とし,非集光ナノ秒パルスレーザーを照射することで照射領域の単結晶化を試みる.上述したように本研究提案の着想は,ナノ粒子を分散したコロイド溶液中への非集光短パルスレーザー照射による“単結晶”サブミクロン球状粒子の形成に関する結果に基づいている.“単結晶”サブミクロン球状粒子の形成機構は,コロイド溶液中への短パルスレーザー照射によるナノ粒子の溶融と,その後それらが結合した粒子内部への一方向の非平衡な加熱・冷却過程に起因するものとされている.従って,バルク多結晶に適用した場合にも同様に,表面から内部方向への非平衡な加熱・冷却過程を通じて表面から単結晶化が進行するものと考えられる.そこで,まずは同手法によるシリコン結晶のサブミクロン球状粒子の形成に関する結果(X. Li et al., Langmuir 27 (2011) 5076-5080.)を参考に,液体中に浸漬した多結晶シリコンを対象として,Nd:YAGレーザーの第二高調波(波長532 nm)を用いてエネルギー密度や繰り返し周波数,照射時間等の実験条件を制御しながら照射実験を行い,その結果得られる照射領域の局所構造を評価することで単結晶化のための最適条件を明らかにする.
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Causes of Carryover |
本年度は液中レーザー溶融法における結晶成長機構について解明するために,サブミクロン球状粒子を対象とした内部構造解析のための手法を確立するとともにレーザー照射条件と結晶成長過程についての関係について明らかにした.したがって,液中に浸漬したバルク多結晶体に対するレーザー照射実験に至らなかったため次年度使用額が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はこれまでに得られた知見をもとに液中に浸漬したバルク多結晶へのレーザー照射実験により単結晶化についての検討を行う.各種材料への適用やステージ走査による選択的結晶化へのアプローチも試みるとともに,各種サブミクロン球状粒子の内部構造評価も同時に行うことで予算を執行する.
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