2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14171
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
幅崎 浩樹 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50208568)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アノード酸化 / ステンレス鋼 / 電解エッチング / 超撥水 / 超撥油 / 階層構造表面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,簡便で工業化が期待できるアノード酸化や電解エッチングなどのウェットプロセスのみで超撥水および超撥油性ステンレス鋼を作製することを目的としている。本年度は,まずステンレス鋼のアノード酸化挙動を詳細に検討した。フッ化物含有有機電解液中においてSUS304およびSUS430の2種類の代表的なステンレス鋼を動電位法によりアノード酸化した。アノード酸化挙動は鋼種により大きく異なり,SUS430では定常電流が160 V程度まで継続して流れたのに対し,SUS304ステンレス鋼では,60 V程度以上で電流が大きく上昇した。40 Vまでアノード酸化した試料の断面TEM観察からSUS304に生成する皮膜はアモルファス構造である一方,SUS430では結晶性酸化物であり,また多孔質層と素地との間にできるバリヤー層もSUS430のほうが2倍ほど厚くなっており,皮膜形態,皮膜の結晶性は鋼材中のNiの有無により大きく変化することが示唆された。また,SUS430では生成電圧により表面形態が変化し,濡れ性制御に重要となる多孔度が生成電圧で制御可能であることが見出された一方,SUS304では表面形態の電圧変化は小さいことがわかった。 電解エッチングについては,塩酸ー硝酸混合浴を用いることで,多数のマイクロピットをもつ表面を得ることができた。エッチング時間や電流密度を変化させることでピットサイズやピット密度などの形態制御法を確立することができた。このエッチングとアノード酸化を組み合わせることによりマイクロ・ナノ階層構造表面の構築に成功し,さらにフルオロアルキルコーティングを施すことにより,ヘキサデカンにも濡れない撥油表面を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ステンレス鋼への多孔質アノード酸化皮膜の生成は,代表者が見だしたものであるが,本研究を通してその生成挙動の理解を深めることができ,電解エッチングを組み合わせることでヘキサデカンにも濡れない表面を構築できたことから,研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,アノード酸化皮膜の多孔度の制御を行う手法を確立するとともに,階層構造の最適化を目指す。また,超撥水・超撥油表面の最大の課題である耐久性の付与については,表面の自己修復化の検討を行う。さらに冬場に着雪性の低減効果の確認も行う予定である。
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Causes of Carryover |
超撥油化に必要な有機コーティング剤の検討を計画していたが,当研究室でアルミニウム用に使っていたコーティング剤がステンレス鋼にも有効で問題なく使えることがわかり,コーティング剤の検討以外の研究項目に研究の重点を置くことができたため,次年度繰越が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に計画している低着雪表面の研究のための評価方法の確立が必要となっており,そのための費用として次年度使用する予定である。
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Research Products
(4 results)