2015 Fiscal Year Research-status Report
高窒素ベイナイトの不完全変態を利用したナノラメラ二相鋼の創製法の探索
Project/Area Number |
15K14177
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古原 忠 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (50221560)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 浸窒処理 / 高窒素オーステナイト / 相変態 / ナノラメラ二相組織 / 相安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
高窒素オーステナイト+フェライトから成るナノラメラ二相組織の創製に先立ち、純鉄およびFe-1mass%M (M : Si, Cr, Mn, Mo) 二元系合金に対して、浸窒処理における温度、時間、導入ガスの組成 (H2:NH3比)を変化させることで、試料内にて均一な窒素濃度分布を有し、且つ、各合金にて同程度の窒素濃度となる処理条件の探索を行った。 浸窒処理では、窒素は試料表面から内部に向かって拡散し、その拡散距離は温度と時間、最終的な試料中の窒素濃度は試料表面での窒素分圧で決定される。また、CrやSiは処理中にCrNやSi3N4の窒化物を形成することが考えられるため、Thermo-Calc.を用いて各合金試料において合金窒化物が生成しない温度域を計算し、処理温度を1000℃、処理時間を同温度にて窒素が試料内部(サイズ:8×15×0.5 mm)まで十分に拡散する60分として浸窒処理を行った。得られた試料に対し、浸窒処理前後の重量測定から窒素含有量、電子線マイクロアナライザによる窒素濃度の線分析およびビッカース硬さ試験より窒素の分布状態、光学顕微鏡観察にてボイド生成の有無をそれぞれ調査した。 いずれの合金系でも導入ガス組成を制御することにより、すべての合金系にて0.3 mass%の窒素を含有し、試料表面にボイドが無く、試料全体に渡り硬さおよび窒素濃度が均一な浸窒材およびその作製条件を明らかにすることができた。 また、得られた試料に対し200℃にて10分間の恒温変態をさせた結果、純鉄ではマルテンサイトとベイナイトの2相組織、Fe-1CrおよびFe-1Mn材では恒温処理により窒化物の析出が観察されており、合金元素の影響が確認されている。現在、析出物の同定および詳細な組織観察をその他の合金に対しても進めている。 今後は恒温変態温度および時間をさらに変化させ、微細組織、各元素の分布、相分率に及ぼす合金元素の影響を系統的に調査していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、 1.Fe-M二元合金の浸窒材の創製とベイナイト変態挙動の解明 2.浸窒材のベイナイト変態挙動の解明 の2点を研究目的として遂行してきた。1に関しては、浸窒処理条件を変化させ、窒素ガスポテンシャルを制御することにより、すべての合金系でほぼ同じ窒素量および均一な窒素分布を有する試料の作製が実現されており、本研究における肝要な合成条件が明らかとなった。 2の浸窒材のベイナイト変態挙動に対しては、現在恒温変態温度・時間を変化させながら微細組織・硬さ・生成相と母相の方位関係等の変化および合金元素の影響に関する実験データの取得・解析および整理を進めており、現時点までの本研究の達成度としては順調に進展している
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、同程度の窒素濃度および均一な窒素分布を有する浸窒材に対して種々の温度および時間で恒温変態処理を施し、相同定、微細組織変化、生成相と母相の方位関係、相分率を系統的に調査することで、ベイナイト変態における合金元素の影響を明らかにしていく。 また、本年度は計画通り二相ナノラメラ組織を有する高窒素低合金鋼の作製を試み、得られた試料に対し強度-延性バランスの評価を行うことでオーステナイトの形態および窒素濃度と力学的安定性の関係を明らかにする。昨年度および今年度に得られる実験データをまとめ、学会発表および論文投稿へとつなげていく。
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