2015 Fiscal Year Research-status Report
水素による純チタン焼結材の高延性機構解明とハイブリッド集合組織形成による高強度化
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15K14182
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
近藤 勝義 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (50345138)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 粉末冶金 / 純チタン / 水素 / 集合組織 / 相変態 / 塑性加工 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素による純チタン焼結材の高強度・高延性発現機構を解明すべく,TiH2粉末を原料とした水素含有チタン焼結材を作製する過程で,低温脱水素・焼結処理における温度条件を制御することで残留水素を含有した試料:H-1173焼結押出材(水素含有量:0.15 wt.%[H]),H-1073焼結押出材(水素含有量:0.33 wt.%[H])を準備した.それぞれ押出方向と平行に繊維状に配列したB/T-texture,六方晶格子のc軸が押出方向と平行に配列した〈0001〉集合組織を有し,いずれも2~3 µm程度の微細な結晶粒組織を呈した.H-1073焼結押出材では結晶粒微細化に加えて集合組織変化による剛性向上により0.2%YS が187 MPa増大した.一方,破断伸びはH-1173焼結押出材:29.2%,H-1073焼結押出材:27.6%となり,いずれも良好な延性を示した.なお,変形双晶が生じ易いことから10%程度の低延性である〈0001〉集合組織を有していたにもかかわらず,大きな破断伸びを示した要因は,高濃度水素の影響によってチタン結晶粒を分断するように析出した水素化物相(δ-TiHX)が変形双晶の局所的発生とその進展・粗大化を抑制し,試料全体に大きな均一塑性変形が生じることが要因であることを解明した.このような高強度・高延性の発現に関して,熱間押出加工時に水素がβ相安定化因子として作用することでチタンのβ-transus温度が低下し,α+β共存域からの塑性加工過程においてハイブリッド集合組織が形成されたことに起因することを明らかにした.これらの結果を基に,水素を活用したチタンの相変態・インプロセス組織構造制御を提案し,チタン素形材の製造工程における本手法の適用時の有効性を実証した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる課題であるα-Ti(hcp)素地中に水素化化合物(δ相)が存在する際の力学特性への影響について調査・解析した結果,水素化物の均一分散によるα-Ti結晶粒の粗大成長抑制効果により耐力の増加と,押出加工過程での相変態に起因する特異な集合組織形成に基づく剛性向上を実証したが,この課題は平成28年度に実施予定の内容であったことから当初の計画以上に進展しており,本研究の主要目的である水素原子によるチタン材の高延性化ダイナミクスの解明に関する方向性を明らかにした.
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の研究成果であるTiH2粉末を用いた微量水素含有純チタン焼結材に,酸素原子による固溶強化を適用することで,水素を活用した結晶粒微細化との相乗効果により既存チタン合金(例えば,Ti-6%Al-4%V)の力学特性を凌駕する超高強靭性純チタン基焼結材(目標値:UTS≧1100 MPa,破断伸び≧20%)の創製を試みる.また,本材料設計指針における高強靭化ダイナミクスを解明すべく,Labusch limitに基づく強化理論から求めた計算結果と実験値との対比を通じてその理論的妥当性の検証を行,上述の2種類の強化機構を複合化した組織構造制御における高強靭化ダイナミクスを解明する予定である.次に,高耐腐食性発現に向けた最表面構造設計の構築に向け,不動態皮膜の形成に及ぼす固溶酸素原子の影響を解析する.大気中の水分等の吸着作用により表面に不動態皮膜を形成し,この保護性により高耐腐食性を発現する.そこで,水素含有Ti焼結材における水膜形成時のTi表面における電気化学ポテンシャル計測による不動態膜の形成挙動に及ぼす酸素原子の役割解明,SSRT試験を用いてTiH2析出物が応力腐食特性に及ぼす影響調査といった2課題を中心に理論的・実験的解析を行う.具体的には,極微小領域での表面電位計測が可能なケルビンフォース顕微鏡のチャンバー内に小型ロードセルを導入し,大気/塩水中での応力負荷時の電位差・電流と腐食速度の相関解析を行い,上記の水素化析出物が応力腐食挙動に及ぼす影響を定量的に解析し,腐食抑制/促進因子としての役割を明らかにする.
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Research Products
(2 results)