2015 Fiscal Year Research-status Report
ナノ結晶粒を有する高性能Mg2Ni水素貯蔵合金の開発
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15K14183
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀田 善治 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20173643)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 結晶・組織制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
高圧下でのねじり加工(HPT加工)を利用してMg2Niに大量ひずみを導入し、水素圧力組成等温測定装置(PCI)にて水素吸脱特性を評価した。比較のために、HPT加工を施していない焼鈍材やHPT加工後に焼鈍を施した試料においても同様の測定を行った。組織観察や構造解析にはX線回折、走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡を用い、水素吸脱特性との相関を調べた。HPT試料では結晶粒はナノレベルに微細化し423 Kの温度でも3.3wt%の水素を初期活性化なしで吸蔵した。結晶粒界は水素の高速移動に有効であることが分かった。HPT加工後に焼鈍した試料では結晶粒がミクロンレベルに粗大化するにもかかわらず、HPT試料と同様に水素の吸収が起こった。高分解能電子顕微鏡観察によれば、積層欠陥が多数生じていて、水素の高速拡散経路になったものと判断した。 本年度は、Mg2Ni以外にも、Mg2TiやMgZrの化合物もHPT加工を行い結晶粒がナノ化することを確認した。特にMgZrは室温で吸蔵速度が速くなることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予測していたように、HPT加工によりMg2Niはナノ結晶化することが確認できた。さらに水素貯吸蔵が初期活性化なしでも可能になり、しかも423 Kの低温度で実現できた。さらに、焼鈍後には積層欠陥が生じていることが高分解能電子顕微鏡で確認され、結晶粒がミクロンレベルに大きくなっても、積層欠陥が水素の拡散経路として効果的であることが分かった。結晶粒界をはじめ、HPT加工後の焼鈍によって導入された積層欠陥は水素の拡散速度を速め、低温かつ高速の水素吸蔵に効果的であることが分かった。関連の研究成果は学術論文に公表すると共に、国際会議等で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では、HPT加工で導入する大量格子欠陥はMg基合金の水素化反応が低温でも速まり効果的となった。しかしながら、吸収された水素の放出が遅く、完全に脱蔵するためには圧力を下げることが必要であるという新たな課題が生じた。したがって、水素放出を速める元素を添加し、HPT加工で多量の格子欠陥を導入することで、水素の吸収とともに、放出も室温常圧付近で可能な対策を講じる予定である。添加元素については水素との親和力が低い元素用いる予定である。 関連の研究成果は随時学術論文や学会シンポジウムで発表する予定である。
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Research Products
(20 results)