2015 Fiscal Year Research-status Report
赤外自由電子レーザーを利用した有機金属化合物の選択的分解と機能性酸化物材料の創製
Project/Area Number |
15K14185
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中嶋 宇史 東京理科大学, 理学部, 講師 (60516483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
友野 和哲 宇部工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (40516449)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 赤外自由電子レーザー / 有機金属化合物 / 酸化物 / 積層造形 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機金属化合物を出発材料とし、有機物の分解を経て目的とする金属酸化物を得る手法が知られているが、熱処理などをベースした分解反応においては、材料設計の自由度に制限がある。本研究では、熱処理の代わりに波長可変性のある赤外自由電子レーザーを用いて、有機金属化合物の化学結合を選択的に切断し、最終生成物としての金属酸化物の微構造、価数、配向性を任意に制御可能な手法の確立することを目指すものである。H27年度においては、Fe基およびTi基の有機金属化合物溶液を基板に塗布、乾燥させた薄膜を作製し、その薄膜に赤外自由電子レーザーを溶媒種、照射雰囲気、レーザー波長、照射時間、照射エリアを変えて様々な条件下で照射し、構造の変化を検証した。XRDおよびFT-IRを用いた構造評価の結果から、熱分解反応では得られない分解中間物の生成か確認されており、本手法による金属酸化物薄膜の構造制御の可能性が示唆された。また本手法を繰り返し行うことで、積層膜や3次元形状を得ることを目的とした赤外自由電子レーザー積層造形装置の開発を完了させた。本装置は、有機金属化合物溶液に基板をディップし、引き上げ後、任意の速度と繰り返し回数でレーザーを照射可能な仕様となっている。この装置を用いて、走査速度と繰り返し回数の最適化条件を探索するとともに、1枚の基板中に様々な条件下でコンビナトリアルに照射テストを行えることを確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
H27年度の研究では、単一の金属材料を含んだ有機金属化合物に対して、赤外自由電子レーザーを照射し、分解反応の基礎的理解を進めることとなっており、完全な金属酸化物薄膜までは得られてはいないものの、特性のレーザー波長を選択することで、例えばC=O結合がOH結合に変化するなどの反応を確認している。照射を何段階か行うことで、目的とした金属酸化物薄膜に最終的に変化することが期待される。また、赤外自由電子レーザー積層造形装置の試作も予定通り完了しており、本装置を用いることで、1枚の基板上に複数のレーザー照射試験を行うことができるため、条件探索を加速して進めることが今後可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、作製した赤外自由電子レーザー積層造形装置を用いて、成膜と照射を繰り返すことで厚膜化を最終的に行いたいと考えている。積層および照射条件を様々に変化させることで、最終的な構造の制御を試みる。また、2元系材料にも挑戦し、機能性酸化物薄膜の実現も検討する。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入時の余りとして、残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度の消耗品費と合算して、残金を執行する予定である。
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