2015 Fiscal Year Research-status Report
組織制御による製鋼スラグの多機能肥料としてのリボーン
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15K14189
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
北村 信也 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (80400422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高 旭 東北大学, 多元物質科学研究所, 教育研究支援者 (80707670)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 製鋼スラグ / 肥料 / 水田 / 含鉄資材 / 溶出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はスラグをFeの供給能力に優れた水稲用の多機能肥料へとリボーンさせる条件を明らかにする事が目的である。すでに予備実験で得た「Fe を供給しやすい鉱物相がガラス相であるという」という知見を足掛かりとして、本研究では組成、冷却速度、冷却雰囲気を 変えたガラス相を合成して評価する。平成27年度は第一ステップとして、潅水初期を模した空気飽和、pH=5.0の水溶液浴への溶出実験を行った。用いた酸化物は、研究室で合成したもので、その組成は市販の製鋼スラグ系肥料に見られるCaO-SiO2-FeO-Fe2O3系とし、CaO/SiO2やTotal_Fe濃度、FeO/Fe2O3を変化させた。酸化物は所定の組成に試薬を混合したものを1773Kで溶解した後、銅板上に流し込みうHeガスを吹き付け急冷した。溶出実験では、400mLの空気飽和イオン交換水に1gの合成酸化物(粒径<53μm)を投入しpHを制御するため希硝酸を滴下した。その結果、CaO/SiO2が0.4では酸化物はほとんど溶出しないが、0.6以上では120分の試験でFeの約35%が溶出した。また、同じTotal_Fe濃度でもFe2O3の場合にはほとんど溶出しなかった。最適組成はCaO/SiO2が0.6、FeOが30mass%でFe2O3が0mass%という結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり平成27年度は水溶液への溶出挙動に関する実験を行った。まず、溶出実験方法を確立した。酸化物の合成に関しては、縦型炉の炉内雰囲気をArとしPt坩堝で混合試薬を加熱・溶解後、すみやかに炉から取り出し銅板上に流し込むとともに、上方からHeガスを吹き付けた。得られた酸化物をXRDで分析した結果、いずれの組成でもガラス化できていた。また、組成も、ほぼ混合比が保たれており、溶解中や冷却中の酸化は抑制できた。溶出試験方法は他の研究ですでに確立した方法を用いた。実験結果では、溶出挙動がCaO/SiO2で大きく変化するという新しい知見が得られた。特にCaO/SiO2が0.4と0.6で極めて大きな差があり、また、0.6よりの高くすると再び溶出率が低下するという結果は予想できないものであった。また、FeOとFe2O3の差も予想以上に大きいものであった。スラグ中のFeは、精錬中は溶鉄が共存しているためFeOであるが、排滓された後には大気と接してFe2O3が増えてくる。従って、実際にFe供給能力を上げるのはCaO/SiO2の適正化とともに冷却雰囲気の制御が極めて重要であることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、予定どおり第二ステップとして水田土壌環境下で溶出挙動をカラム試験で検討する。実験に用いるカラムは、塩ビ製パイプに、実際の水田の土:水の割合で土壌とイオン交換水を装入し、恒温槽内に長時間置くインキュベータである。パイプの両側にpHおよびORPプローブを挿入し土壌中のこれらの値をモニタリングできる。また、カラム下部にポーラスカップを設置し、一定量の土壌水を毎日排出するとともに同量のイオン交換水を上部から補充する。排出された溶液を分析し土壌溶液中のFe濃度や他の陽イオン濃度を測定する。また、約60日間の実験を行った後に、土壌を乾燥させ、酢酸アンモニウム抽出法にて土壌粒子に吸着している交換性塩基濃度を測定する。本研究では、「秋落ち」の傾向が強い山形県の水田土壌を用い、それに前年度と同様な方法で合成した酸化物を一般的な施用量である200g/m2相当量を混合する。酸化物はpHや他の陽イオン濃度変化が変わらないように、基本的な組成は一定とし、冷却条件(特に急冷開始温度)や冷却雰囲気を制御してガラス相分率や組成、及び、Fe2+/Fe3+を変化させる。評価はFeの供給量で行うが、それだけでなく、水田土壌に必要な塩基バランス(Ca:Na:Mg)、pH、ケイ酸供給量についても行い多機能肥料として総合的な判断をする。
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Research Products
(1 results)