2015 Fiscal Year Research-status Report
超硬工具の新規リサイクルプロセスの実現に向けた高温塩化反応に関する基礎的研究
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15K14190
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
谷ノ内 勇樹 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40644521)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | タングステン / コバルト / 塩化反応 / 超硬工具 / リサイクル |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の産業活動に不可欠なタングステンとコバルトの国内資源循環を促進するためには、環境調和性と元素分離精製能に優れた超硬工具スクラップの新規リサイクルプロセスの実現が必要である。そこで本研究では、炭化物や金属、酸化物など種々の化学状態にあるタングステンとコバルトについて、高温塩化反応の機構を解明するとともに、得られた知見を元にして、超硬工具スクラップからタングステンとコバルトを分離回収する新技術の開発を目指す。 初年度である平成27年度は、主に各種熱力学的解析に基づく反応場の設計と適切な塩化剤の探索に取り組んだ。例えば、タングステン-酸素-塩素系とコバルト-酸素-塩素系に関して、塩素分圧と酸素分圧を変数として安定化学種を示す化学ポテンシャル図を作成し、タングステンの塩化揮発が平衡論的に可能となる反応温度と塩素・酸素分圧領域や、適切な塩素・酸素分圧に反応場を制御するための塩化剤や酸化剤を調査した。各種熱力学的解析によって、適切な塩素・酸素分圧下では、炭化物あるいは酸化物状態のタングステンを酸塩化物や塩化物へと変換し、コバルトに対して優先的に揮発できる可能性が示された。 また、タングステンとコバルトの高温塩化反応に関する実験的検証を行うために、耐腐食性反応容器やガスラインを含めた実験装置の作製に取り組んだ。反応容器のデザインや、揮発物の回収法・分析法など高温塩化反応実験に関する各種ノウハウを蓄積することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各種熱力学的解析に基づく反応場の設計と適切な塩化剤の探索については予定通り進捗した。その一方、高温塩化反応の実験的解析については、反応容器のデザインや反応生成物の回収法・分析法などの実験ノウハウの蓄積に予定より時間がかかったため、当初の予定より若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
炭化タングステン、酸化タングステン、金属コバルト、タングステンとコバルトの複合酸化物などの市販試薬を試料として高温塩化反応実験を行い、反応機構や揮発挙動の解析を進める。また、試薬を用いた実験により得られた知見に基づいて、実際の超硬工具の研削スラッジからのタングステン成分とコバルト成分の分離回収に取り組む。
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Causes of Carryover |
実験装置の立ち上げに必要な各種部材の購入費用を当初の予定より低く抑えられたため繰越金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金については、反応容器の部材の購入費用および国内の学会で成果を発表するための旅費として使用予定である。平成28年度分の助成金については、当初の予定通り、試薬や高純度ガスなどの消耗品の購入費、海外での成果発表のための旅費、実験データ等の整理を行う研究補助員の費用、および学会誌への論文投稿費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)