2015 Fiscal Year Research-status Report
鋼板上へのカチオンをドーピングした機能性高分子薄膜の新規電解析出プロセスの開発
Project/Area Number |
15K14195
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中野 博昭 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70325504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大上 悟 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90264085)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電解重合 / ポリアニリン / 鉄 / 耐食性 / p-トルエンスルホン酸 / シュウ酸 / 支持電解質 / 分極曲線 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化重合法を選択し,単量体としてアニリン,支持電解質としてp-トルエンスルホン酸,シュウ酸を用い,定電流法,定電位法によりFe上へのポリアニリン膜の作製を試み,電解重合膜の形態,耐食性に及ぼす電解条件の影響を調査した。重合膜は,pH=2からpH=4の溶液では部分的に形成されるのに対して,pH=7からpH=10の溶液では全面的に形成され,表面が平滑となった。8 A⋅m-2から30 A⋅m-2の電流密度では,表面が平滑で耐食性が良好な重合膜が得られたが50 A⋅m-2以上での重合膜は表面が不均一となり重合膜被覆Fe板の耐食性の改善効果も小さかった。陽極電位が0.4 Vおよび0.8 Vでは重合膜の形成が不十分であり,2.0 Vでは表面の凹凸が大きくなった。支持電解質としてp-トルエンスルホン酸のみを添加した溶液から得られた重合膜は,3 mass% NaCl水溶液に3 h浸漬すると剥離した。支持電解質としてシュウ酸のみを添加した場合,重合膜の密着性は良好であったが膜の表面に凹凸および細孔が多数存在し,Fe板の耐食性の改善効果が小さかった。支持電解質としてp-トルエンスルホン酸を用いた場合とシュウ酸を用いた場合の耐食性を比較すると,p-トルエンスルホン酸を用いた方がFeの耐食性改善効果が大きかった。これは,p-トルエンスルホン酸を用いた方が,重合膜が平滑になっており欠陥が少ないため,Fe2+イオンの重合膜中の透過がより抑制されるためと考えられる。支持電解質としてp-トルエンスルホン酸とシュウ酸の両方を添加すると,重合膜被覆Fe板の耐食性は大きく改善され,密着性も良好であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
電解質としてp-トルエンスルホン酸を用いて電解重合を行なうと重合膜被覆Fe板の耐食性が大きく改善された。これは,p-トルエンスルホン酸を用いると重合膜が平滑になっており欠陥が少ないため,Fe2+イオンの重合膜中の透過がより抑制されるためであることを明らかにした。しかし,支持電解質としてp-トルエンスルホン酸のみを添加した溶液から得られた重合膜は,3 mass% NaCl水溶液に3 h浸漬すると剥離した。そこで,p-トルエンスルホン酸とシュウ酸の両方を添加した場合,重合膜を3 mass% NaCl水溶液に 3 h浸漬しても剥離は観察されず,重合膜の密着性は良好であった。このように,支持電解質としてp-トルエンスルホン酸およびシュウ酸を添加して電解重合を行なうと,ポリアニリン膜被覆Fe板の耐食性および密着性を両立出来ることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 高分子アニオン固定P型高分子膜の自己修復性に及ぼす高分子アニオン,ドーパントカチオン,電気化学的活性度の影響調査 下地のZnと反応して安定な腐食生成物である塩基性塩化亜鉛[ZnCl2・4Zn(OH)2]を形成させる高分子アニオンとドーパントの最適な組み合わせを探索する。高分子アニオン固定P型高分子膜被覆鋼板の自己修復性という観点からどのタイプの高分子アニオンとドーパントの組み合わせが有効であるかを明確にする。また,高分子膜としてポリアニリン,ポリピロール以外のポリチオフェン,ポリピレンなどの電解析出条件を調査した後,自己修復性に及ぼす高分子膜の種類,高分子膜の電気化学的活性度の影響を調べる。 2. 高分子アニオン固定P型高分子膜の成長機構の解明 自己修復性の良好な高分子膜を作製できる電解条件下において,膜形成時の表面を,電気化学AFMまたはレーザー共焦点微分干渉光学顕微鏡によりin-situ観察し,膜の成長挙動を調べる。更に電解時の膜の成長機構をサイクリックボルタモグラム測定,電気化学的インピーダンス測定,電解時の皮膜の重量分析,電気化学的水晶発振子マイクロバランス測定等により推察する。
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Research Products
(1 results)