2015 Fiscal Year Research-status Report
ヘミスフェリカル型シリコン太陽電池の製造プロセス制御
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15K14196
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮原 広郁 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90264069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 一人 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50404017)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 結晶成長 / ファセット成長 / 双晶 / 金属生産工学 / 電子・電気材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
シリコンを用いた半導体素材は太陽電池用部材として広い分野で活用されているが,原料の枯渇の問題が挙げられており,インゴット凝固やウエハ切削加工等を経ない新たな太陽電池製造プロセスの開発が急務となっている.本研究ではインゴット結晶に対抗しうる製膜プロセスとして,高純度シリコンをミスト状にして電極基板上に製膜させる方法を考案し,高性能マイクロ結晶太陽電池薄膜モジュール製造する技術を見出すことを目標とした. 平成27年度は低融点合金として純スズ,純ビスマス及びスズ-ビスマス合金を溶融させてミスト粒子を得る条件を調査した.まず,ノズル直径,位置,不活性ガス圧力,流速等のプロセス条件を変化させ,液体の吸引力及び得られた液滴直径との関連性を調査した.液体の吸引力は噴射する不活性ガスの速度の二乗に関連して変化すること,この時,低速と高速では吸引力に及ぼす速度の影響が大きく変化することを見出した.また,水を用いたモデル実験も行い,種々の密度を有する液体における吸引力の予測が行えられることを示した. また,得られたスズ合金製膜試料を調査したところ,ノズルからの距離に依存してマクロスケールで膜の厚さに不均一性が残り,均一に製膜するためには更なる条件の最適化が必要と考えられた.ノズルに近い場所で製膜された結晶は21ミクロンと比較的大きく,ノズルから離れるほど結晶は微細となった.凝固組織及び溶質元素の再分配についてもノズルからの距離に依存して変化し,製膜試料の中心部でのミクロ偏析は試料外周部では結晶の微細化に伴い偏析も少なくなった.シリコンと同じファセット型結晶成長形態を有するビスマスにおいても,結晶粒径及び分布はノズル位置に依存して変化しており,シリコンを用いた実験条件選定に貢献する知見が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,インゴット結晶に対抗しうる製膜プロセスとして,高純度シリコンをミスト状にして電極基板上に製膜させる方法を考案することにある.このうち,平成27年度で目標の一つであったミスト粒子の形成過程について,低融点金属による実験及び水を用いたモデル実験も複合させて評価できた.より高い融点を有する試料の作製は装置の作製上十分な実験ができなかったが,低融点でも種々の濃度を有するスズ-ビスマス合金を用いることにより,液体の汲み上げ過程,ミスト粒子の形成,飛行,付着及び凝固過程を詳細に調査することができた.溶融金属の汲み上げに関する調査については,水を用いたモデル実験も行い,種々の密度を有する液体における吸引力の予測が行えられることを示した.また,溶融金属についても,噴射の状態をその場観察することにより,最適な不活性ガス圧力及び流速条件を見出すことができた.さらに,物理モデルと比較することにより,液体のミスト粒子化における現象を考察することができた. 一方,製膜後の試料についても,試料温度測定や凝固組織解析から液滴過冷度についても推測できた.さらに,液滴内の核生成及びその後の結晶成長については推測以上に均一・微細化されており,今後の実験条件を定める指針を得た.また,得られた製膜試料の組成解析から,マクロ及びミクロスケールでの不均一性及び濃度偏析が明らかとなり,今後の解決すべき課題となった.特にノズルに近く,過冷が小さいと考えられる場所では結晶粒径や偏析が比較的大きくなった.目的とする太陽電池は薄くかつ均一に組織を制御する必要があるが,試料外周部で比較的大きな過冷凝固と微細かつ均一に分布した結晶が得られている実験結果をもとに,ノズル位置,ガス流速,溶湯保持温度等の製膜条件をより最適化することができるものと考えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果に基づき,平成28年度はシリコンによるミスト粒子の単結晶成長条件の最適条件と特性評価に関する研究を進める. 平成27年度で作製中である高融点合金用ミスト粒子装置を用いて,シリコンの製膜条件の最適化を行う.還元雰囲気を保つために5%以下の水素を含む不活性ガスを用いて,平成27で得られたノズル位置,ガス流速,溶湯保持温度等の知見をもとにシリコン膜の生成を行う.高融点からの急速冷却であり,ミスト粒子の大きさが膜特性を大きく影響すると考えられるので,均一で均質な粒子を生成する条件を見出す.さらに本プロセスは溶融状態から基板に製膜する方法であり,シリコン試料内に大きな歪みを生ずる可能性がある.歪みは光―電気変換効率に大きく影響するので,必要に応じて製膜基板を200~700℃まで昇温させる実験を行い,組織形成過程に及ぼす結晶/基板界面の歪の影響についても調査する. 一方,得られた粒子分散基板を用い,既存のスピンコータでN型素子を形成し,ソーラシミュレータにより太陽電池特性を評価する.現存するスピンコータは平滑試料面における塗布仕様となっているが,本研究で開発する試料表面の凹凸は小さいことから十分塗布できると考えられる.続いて得られた太陽電池にソーラシミュレータによる擬似太陽光を照射し,起電力と電流値を測定して試料の光-電気変換効率を調査する.一般の太陽電池は平滑表面であり,本研究で作製する試料は凹凸があるので基板表面の凹凸の効果についても評価する.最後に変換効率と得られた製膜試料の粒子形状・分布,表面酸化,格子歪み欠陥,単結晶化,結晶方位等の因子について相互に評価し,変換効率を製造プロセスにフィードバックさせながら,パラメータの最適化を図る.
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Causes of Carryover |
本研究では,溶融金属を直接ミスト粒子に変換する方法として,電気炉と高流速ガスによる装置を考案している.平成27年度は比較的低い融点を有する合金についてミスト化現象を詳細に調査し,平行して高融点合金用ミスト粒子装置を作製した.高純度シリコンは凝固潜熱が大きく,また酸化されやすいことから,慎重に装置を設計してきたが,黒鉛発熱体の設計を変更する可能性が出てきた.そこで平成27年度の予算のうち,いくらかを平成28年度に移行し,より性能の高い高融点合金用ミスト粒子装置を作製することとした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
黒鉛発熱体を主として,高融点合金用ミスト粒子装置の部品の購入に充てんする予定である.黒鉛発熱体はオーダーメイドとなり,その制御装置も改良する必要があることから使用差額はすべて,装置の改良に充てられる予定である.
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Research Products
(1 results)