2015 Fiscal Year Research-status Report
シリコン量子ドットへの原子膜物質の気相析出による界面制御
Project/Area Number |
15K14200
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
瀬戸 章文 金沢大学, 自然システム学系, 教授 (40344155)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 秀憲 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (40294889)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 薄膜・微粒子形成操作 / レーザー / 量子ドット / ナノ粒子 / 半導体 / プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体量子ドットは,ナノ領域への励起子の閉じ込めによる量子効果が発現できる次世代材料系である。この量子ドットの実用化に向けた最も大きな課題の一つは表面状態の制御である。本提案では,申請者らが独自に開発してきたエアロゾルプロセスによって単分散シリコン(Si)量子ドットを合成し,その表面に単層あるいは多層の原子膜物質を結晶成長させたハイブリッド材料の合成に挑戦する。このために,レーザー照射により多成分ターゲットを同時に蒸発させ,それらの核生成・結晶成長過程を厳密に制御することでSi量子ドット表面のナノレベルでの制御を目指す。 今年度は、シリコン量子ドット表面に単層・多層の原子膜物質をハイブリッド化するために,レーザーアブレーションによるSi量子ドット表面への前駆体被覆実験を中心に研究を行った。まず,これまで実績のあるオニオンライクカーボンとSi量子ドットのハイブリッド化を行うために、ガス状の炭素原料が流通する管型の反応装置内部にシリコンターゲットを設置し、そのレーザー照射によってシリコン量子ドットの合成と表面被覆を試みた。得られた粒子を高分解能電子顕微鏡や元素分析等により,界面構造を原子レベルで解析したところ、数nmの被膜を有するコアシェル構造の粒子生成が確認された。 続いて、カルコゲナイドを形成する遷移金属(Mo,W等)によるSi量子ドット表面の被覆を試みるために、種々の硫黄化合物を形成する候補物質の選定を行った。次年度以降、これらの物質を用いた複合化を行うとともに、今年度導入した顕微鏡システムによって、その蛍光特性や電子輸送特性を解析する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、表面被覆の予備的検討として,雰囲気ガスとして炭化水素を用いたSiターゲットへのレーザー照射により,カーボンで被覆されたコアシェルナノ粒子の合成を試みた。得られた炭素被膜は結晶性が低いものの、数nmの膜厚が得られていることが確認された。さらに、シリコン表面と炭素間の化学結合過程を解析するために、ガラス基板上へ堆積した炭素ナノ粒子をターゲットとして、X線光電子分析(XPS)を用いて、レーザー多回照射による化学結合の変化を解析した。今年度得られた知見をもとに、今後、複合ターゲットの構造,レーザー照射条件及び粒子合成場の雰囲気(温度,プラズマ状態)をパラメータとして実験,理論の両面から気中浮遊状態での被膜形成条件の最適化を行うことが可能となっている。さらに、来年度以降行う、カルゴゲナイド系の原子層被膜材料としての遷移金属の選定およびそのための複合ターゲットの基本設計を行った。 得られた粒子の光物性および電子輸送過程を解析するための顕微鏡システムを導入した。このシステムにより、顕微鏡視野内において電流プローブを設置した状態で、その蛍光特性や電流電圧特性を解析することが可能となっている。以上より、おおむね当初計画通り順調に研究は進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は、遷移金属前駆体からのカルコゲナイド系原子膜物質の析出とSi量子ドットとのハイブリッド化が中心的な課題となる。その合成のために、まず,複合ターゲットのレーザー同時照射により,カルコゲナイド系化合物を形成する遷移金属(Mo,W等)を前駆体としてSiの表面に被覆させる。このコアシェル粒子を気相浮遊状態のまま,二硫化水素などの雰囲気と混合させ,表面反応により硫化物を形成させる。一方で,この前駆体粒子にレーザーが多回照射される条件を整え,シリコンとの界面における相互作用を促進させる。この際,レーザー励起相転移プロセスによってアモルファス炭素からグラフェンが析出するのと同様に,レーザーが原子間の金属結合やカルコゲナイド結晶の欠陥を選択的に励起し,透明物質(=原子膜化合物)を残存させる。さらに、界面において遷移金属がシリコンに部分溶解・析出すれば,Si表面との接合された状態で結晶が成長したハイブリッド構造の形成が期待できる。 予備的な検討として、本年度行ったように、ガラス等の透明基板上にナノ粒子を堆積させ、レーザーを多回照射する条件を整えることも併せて検討する。基板上および気中のレーザー照射実験ともに、そのパラメータとして,物質系(金属材料,ガス種)に加えて,装置内部の温度,圧力及びレーザーの照射強度を変えてハイブリッドSi量子ドットが形成できる最適条件を探索する。
|
Causes of Carryover |
見積金額と実際の納入額に差が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度消耗品費として使用予定。
|