2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14209
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
市村 重俊 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (20333156)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 膜 / ファウリング / リン脂質ポリマー / 表面開始原子移動ラジカル重合法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ろ過膜のファウリングはファウラントが膜表面や細孔内に吸着することで生じるため、その対策として2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(以下 MPC)ポリマーによる表面処理が期待されている。本研究では、耐ファウリング性の他に、ポリマー鎖の長さおよび数密度により透水性と分画性が制御可能な新規膜の開発を目指している。平成28年度は、表面開始原子移動ラジカル重合法(以下SI-ATRP)によるポリマー層の構造および物性の制御手法の確立の他、膜への重合と膜性能に対するポリマー層の構造の影響について検討することを目的とした。 基材には、表面が平滑なシリコンウェハおよびシラス多孔質ガラス膜(孔径50 および400nm、以下SPG膜)を利用した。表面処理の操作は、 APTESによるアミノ化、BiBBによる開始剤化、MPCの重合の三つのステップとした。アミノ化には溶液法と蒸着法を、重合法にはSI-ATRP法とSI-ARGET ATRP(以下SI-ARGET)法を用いた。フリーの開始剤にはEBIBを利用した。 シリコンウェハを基材として用いた結果、重合度DP([MPC]/[EBIB])によりMPCポリマー層の厚さが制御できること、厚みの増加とともに表面がより親水化すること、より平滑化されることが確認できた。本年度新たに検討したSI-ARGET法では、最大170nmのポリマー層が得られた。SPG膜を用いた結果、ポリマー鎖によりDextranに対する阻止率が向上したが、アミノ化の条件が膜の透水性に影響するなど新規膜開発のコンセプトの検証には至らなかった。また、孔径400nmの膜の表面処理において、純水透過流束の大幅な低下が見られた。これは細孔内のポリマー鎖密度の増大が影響しているものと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で提案している新規分離膜のコンセプトを検証するには、複数のパターンの膜を実際に作製し、その性能を評価する必要がある。当初予定していた基材の孔径と重合法のみでは検証に至らない可能性が生じたため、複数の孔径の基材膜を利用するとともに、新たな重合法を用いることにした。その結果、やや遅れてはいるものの、次年度への見通しが立てられた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究により、平滑なシリコンウェハに対して重合条件とポリマー層構造の関係を明らかにすることができた。また、多孔膜への重合には平滑な表面の場合とは異なる条件設定の必要性が示唆された。次年度は、これらの知見をもとに本研究で提案している新規分離膜のコンセプトを検証する。特に、膜性能(透水性および分画性)への影響が大きいと考えられる重合部位および重合状態の制御について検討する。最終的には、これにより得られた膜を利用し、ポリマー層の構造と膜性能の関連性を定量的に評価する。また、ろ過条件として操作圧力やクロスフロー流速が膜性能に及ぼす影響を検討することで、新規膜の分離機構についての新たな知見を得る予定である。
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Causes of Carryover |
進捗状況が若干遅れていることもあり、研究の遅れならびにそれにともなう計画の変更が生じた。それによって当初の計画より物品費の購入および学会発表の件数が少なくなっていることが次年度への繰越の主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度への繰り越しは、研究の遅れならびにそれにともなう計画の変更によるものであるが、本年度の成果により研究目的の達成に見通しが立てられた。研究全体としては不可欠な経費であり、次年度の物品購入ならびに学会発表の経費として利用する予定である。
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