2015 Fiscal Year Research-status Report
還元的切断によるペプチド鎖の選択的変換を可能にする固体触媒の開発
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15K14219
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田村 正純 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10635551)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 水素化 / 不均一系触媒 / アルコール / アミン |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、グリーンバイオマス資源由来のタンパク質を分解することによるアミノ酸やアミノアルコールなどの化学品合成が、安価な手法として注目を集め始めている。タンパク質のペプチド結合の選択的切断は生命活動における重要な反応であり、酵素であるプロテアーゼが触媒しているが、人工触媒による酵素レベルの活性、選択性を達成した例は未だない。酵素は理想的な触媒の一つであり、それに勝る機能を有する触媒開発は触媒化学者の夢である。そこで本研究では、新たに、ペプチド鎖を自由自在に切断可能な固体触媒の開発を目指した。特に、アミド結合を加水分解で切断するのではなく、水素化反応により切断することに着目し、高活性かつ高選択的に切断可能な固体触媒の開発を目指した。モデル基質として比較的シンプルなアミドである1 級アミド用い、アミド水素化によるアミンとアルコール合成に有効な触媒系の探索を行った。特にカルボン酸の水素化に高い活性を有することがすでに分かっているRh+金属酸化物やRu+金属酸化物を中心に触媒スクリーニングを行った。触媒反応試験は、回分式反応器を用い、水素加圧下で行った。反応条件としては、反応温度、水溶液中の基質濃度、触媒とその量、溶媒、反応時間などを変化させ、最適化を行った。基質については、モデル基質(1 級アミド)やN側置換基の官能基や立体構造を変化させた化合物を用い、反応性や選択性の違いを検討し、基質による選択的水素化のポテンシャルを検討した。その結果、主金属としてはRuが最も優れており、さらに第二金属としてMnOx種が有効であることを見出した。その結果、Ru-MnOx/SiO2触媒を用いることで、シクロヘキサンカルボキサミドの水素化反応によりシクロヘキサンメタノールを70%の収率で得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル反応としてシクロヘキサンカルボキサミドの水素化によるシクロヘキサンメタノールとアンモニア合成を用いた。触媒検討としてまず、主金属のスクリーニング検討を行った。市販のカーボン担持貴金属触媒(Rh,Ru,Pt,Pd)を用いて検討を行った結果、活性・選択性の観点から、水素化の主貴金属としてRuが最も有効であることを見出した。次に、Ru/SiO2に対し種々の金属酸化物種MOx(M=Re,Mn,Co,V,Nb,W,Fe,Mo)を添加した触媒を調製し、第二金属検討を行った。MnOxを担持させたRu-MnOx/SiO2触媒がRu/SiO2触媒に比べ、活性・選択性が向上することを見出した。さらに、反応条件検討として、反応温度、溶媒、水素圧、基質濃度などの検討を行った。特に溶媒効果が顕著であり、各種溶媒検討の結果、水が最も有効であり、転化率60%で目的のシクロヘキシルアルコールを80%程度の選択性で与えることを見出した。また、反応温度を160℃から100℃に下げることで選択性は著しく向上し、反応初期選択性90%以上を示した。反応時間を72時間に延ばすことで、転化率85%、収率70%を達成した。この結果はこれまでに報告されている不均一系触媒の中で最も高い収率である。しかしながら、本研究を通した課題として、反応活性がまだ低いことと反応に伴い触媒活性の失活が反応経時変化の挙動から推察された。今後、更なる活性向上を目指し、触媒構造や金属種の検討を行うと共に、触媒失活を防ぐ方法を開発することが、重要な課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
本反応に有効であったRu-MoOx/SiO2の触媒構造解析を行うと共に、ペプチド鎖への展開を視野に入れた基質の適用性拡大検討を行う。また、触媒構造解析に加え、反応速度論解析を行うことで、これらの結果を組み合わせて考察することで、本反応の反応機構解明を目指す。触媒のキャラクタリゼーションとしては、昇温水素還元(TPR)、XRD、水素吸着量測定、CO 吸着のFTIR、ラマン分光法、XANES+EXAFS(SPring-8)、TEM、XPS など方法を用い、総合的に評価する。触媒反応特性については、反応温度依存性(活性化エネルギー)、基質濃度依存性(反応次数)、基質適用性等に関する検討を行い、触媒反応特性と触媒構造を踏まえた反応機構を提案する。また、反応機構検討から得られた結果を更なる高性能触媒の開発に活用する。ペプチド鎖への適用検討としては、まず、安価で入手しやすい種々のジペプチドをモデル基質に用い、どのアミド結合(アミノ酸の組み合わせや立体構造など)に選択的に作用するかの見極めを行う。また、昨年度の検討から見出された課題である反応後半での触媒活性の失活に関しては、触媒の劣化や生成物等による被毒等が考えられるため、反応に使用した触媒の解析を行うことで、反応前後での触媒の変化を検討する。さらに、生成物の反応への影響として、アミンやアルコールやカルボン酸等の添加による触媒活性の変化についても検討を行う。
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Research Products
(1 results)