2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14226
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
人見 穣 同志社大学, 理工学部, 教授 (20335186)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | フッ素化 / 酸化 / 鉄錯体 / マンガン錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然に存在するハロゲン化酵素である単核非ヘム鉄酵素SyrB2は、オキソ基のシス位に塩素イオンが配位した単核オキソ鉄(IV)種を発生し、基質の不活性C-H結合から水素原子を引き抜き、鉄イオンに配位した塩素を生成した炭素ラジカルに結合させ、C-Hハロゲン化反応を達成している。一方、Grovesらは、マンガンサレン錯体やマンガンポルフィリン錯体を触媒に用いた場合、ヨードシルベンゼンを酸化剤、様々なフッ素源の存在下、ベンジル位C-H結合がC-F結合に直接変換できることを報告している。その活性種は、オキソ基のトランス位にフッ素イオンが配位したオキソマンガン(V)種であるとされている。本研究では、天然酵素と同じように、オキソ基のシス位にフッ素イオンが配位した高原子価鉄オキソ種を発生し、C-Hフッ素化反応を触媒する金属錯体触媒の開発を目指した。まず、既に、Grovesらの報告(Wei Liu, Xiongyi Huang & John T Groves, Nature Protocols 8, 2348-2354 (2013) doi:10.1038/nprot.2013.144)を参考にマンガンサレン錯体を酸化剤とし、ヨードシルベンゼンを酸化剤、トリエチルアミン3フッ化水素をフッ素源とし、ベンジル位C-Hフッ素化反応を行い、報告通り本条件下においてC-H結合を直接フッ素化できることを確認した。この条件下において、tpa、dpaq、propaqなど様々な窒素4座配位子、窒素5座配位子を用いて調製した単核鉄および単核マンガン錯体を触媒として用い、C-Hフッ素化反応を行った。その結果、これらのマンガン錯体を用いた場合、C-Hフッ素化生成物が低収率でしか得られないことが判明した。しかし、酸化剤を最適化することにより、オキソ基のシス位にフッ素イオンが配位した高原子価鉄オキソ種を発生可能な単核鉄錯体を用いた場合、C-Hフッ素化反応が高効率に進行することが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今回、世界に先駆けてC-Hフッ素化反応を進行させる鉄錯体触媒を見いだすことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今回、世界に先駆けてC-Hフッ素化反応を進行させる鉄錯体触媒を見いだすことができた。今後は、反応条件および錯体構造を最適化するとともに、酸化活性種の同定と反応機構の解明を行う。また、C-Hフッ素化反応を鍵とする医薬品の合成に取り組む。
|
Causes of Carryover |
本年度は、既に合成していた触媒を利用し、反応スクリーニングを行った。その結果、比較的単純な触媒を用いた場合でも、C-Hフッ素化が進行することが判明した。そのため、当初計画していた複雑な構造を有する触媒の合成を行わなず、反応条件の最適化に集中した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、反応条件の最適化を行うとともに、電子状態が系統的に異なる錯体群を合成するための合成器具の購入と、それらを用いた多数の反応を迅速に並行して行うための反応装置を購入する計画である。
|
Research Products
(2 results)