2016 Fiscal Year Research-status Report
多電子・水素イオン協奏型二酸化炭素-メタノール変換を触媒する革新的人工酵素の創製
Project/Area Number |
15K14239
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
天尾 豊 大阪市立大学, 複合先端研究機構, 教授 (80300961)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 二酸化炭素還元 / 生体触媒 / ビオローゲン / 人工補酵素 / 人工光合成 / メタノール |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで常温・常圧で多電子-水素イオン協奏型二酸化炭素-メタノール変換反応を触媒できる単独の分子性触媒や無機触媒では達成できていない.これは6個の電子と水素イオンを同時に利用し二酸化炭素をメタノールに還元する必要があるため非常に困難である.本提案では,二酸化炭素還元に基づくメタノール生成反応の触媒創製確立を目指し,ギ酸・アルデヒド・アルコール脱水素酵素一元複合体を設計・創製することを目的としている.平成27年度に得られた, ギ酸・アルデヒド・アルコール脱水素酵素に有効なビオローゲン誘導体を基盤とした人工補酵素について,二酸化炭素-メタノール変換の最初の段階である,二酸化炭素ーギ酸変換反応を触媒するギ酸脱水素酵素に対する,様々なビオローゲン誘導体の一電子還元体の効果を酵素反応速度論的解析を用いて検討した.これらの結果を基盤としてビオローゲン誘導体の持つ置換基、ビオローゲン分子内での2つのピリジン環のねじれ角等とギ酸脱水素酵素の酵素活性との機能相関を明らかにする事ができた.加えて,一般的なビオローゲン誘導体であるメチルビオローゲンと二酸化炭素-メタノール変換の最後の段階であるホルムアルデヒドーメタノール変換反応を触媒するアルコール脱水素酵素との相互作用について酵素反応速度論的解析を用いて検討した.その結果,メチルビオローゲンとアルコール脱水素酵素との相互作用とメチルビオローゲンとギ酸脱水素酵素との相互作用とではほぼ等しい親和性で機能している事を見出した.これらの事から二酸化炭素-メタノール変換反応を効率的に進めるためには第2段階の反応であるギ酸-ホルムアルデヒド変換反応を触媒するアルデヒド脱水素酵素を活性化する人工補酵素が必要であるを明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の当初研究計画は,平成27年度に合成した人工補酵素-脱水素酵素複合体を用い,それぞれの脱水素酵素が触媒する分子変換反応の機構を調べ,それぞれの分子変換反応について,酵素反応速度論的に反応過程を解析することである.平成27年度に得られた, ギ酸・アルデヒド・アルコール脱水素酵素に有効なビオローゲン誘導体を基盤とした人工補酵素について,二酸化炭素ーギ酸変換反応を触媒するギ酸脱水素酵素に対する,様々なビオローゲン誘導体の一電子還元体の効果を酵素反応速度論的解析を用いて検討し,ビオローゲン誘導体の持つ置換基、ビオローゲン分子内での2つのピリジン環のねじれ角等とギ酸脱水素酵素の酵素活性との機能相関を明らかにしたことに加えて,ビオローゲン誘導体であるメチルビオローゲンとアルコール脱水素酵素との相互作用についても酵素反応速度論的解析を用い,メチルビオローゲンとアルコール脱水素酵素との相互作用とメチルビオローゲンとギ酸脱水素酵素との相互作用とではほぼ等しい親和性で機能している事を世界で初めて見出した.これらの事から二酸化炭素-メタノール変換反応を効率的に進めるためには第2段階のギ酸-ホルムアルデヒド変換反応を触媒するアルデヒド脱水素酵素を活性化する人工補酵素が必要であるを明らかにした事も大きな意義がある.当初計画通り,前年度に構築した人工補酵素ー脱水素酵素複合体を用い,それぞれの脱水素酵素が触媒する分子変換反応の機構やそれぞれの分子変換反応についての酵素反応速度論的解析が進んだ事からおおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度は,金属イオンによる錯形成を基盤とした人工補酵素-脱水素酵素複合体の一元化及び酵素活性機能評価に着手する.これまでに構築してきた3つの人工補酵素-脱水素酵素複合体のイミダゾール基を金属イオンを用いて配位結合させることによって一元複合体を構築する.用いる金属イオンとしてイミダゾールと強く錯形成するニッケル,パラジウムイオンとする.一元複合体の精製は遠心または超遠心分離機を用いる.さらに一元複合体の生成及び純度確認には研究室所有の電気泳動を用いる.最後に一元複合体を触媒として用い,二酸化炭素ーメタノール変換反応について酵素反応速度論的に反応過程を解析する.得られた基礎的データの蓄積から,単一の分子触媒では実現できなかった二酸化炭素のメタノールへの分子変換反応系を確立する.可能であれば,可視光増感剤を用い,光照射による二酸化炭素-メタノール変換反応系への展開も進める.
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Causes of Carryover |
平成27年度に引き続き,研究が順調に進捗したため,当該年度も国際会議での招待講演を含む成果報告のための旅費が計画よりも多く支出した。また、研究試薬等の効率的な購入・使用により余剰金が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に生じた余剰金について,次年度は最終目標達成のために物品費及び積極的な成果報告のための旅費として効率的に活用する事を計画している.余剰金419,390円のうち物品費に150,000円、残りを旅費に充当する.
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