2015 Fiscal Year Research-status Report
ダイナミック三次元培養環境制御によるiPS細胞由来のパターン化血管組織の構築
Project/Area Number |
15K14240
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
杉浦 慎治 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 主任研究員 (10399496)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高木 俊之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 主任研究員 (10248065)
柳川 史樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 創薬基盤研究部門, 研究員 (50645877) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞 / ゲル / 血管 / パターン / 微細構造 / 光分解性ゲル / 光造形 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内の発生現象は時間的に変化する細胞周囲の三次元環境によって制御されているが、この三次元的かつ時間的に変化する環境を生体外で再構成することは難しく、生体外で幹細胞から三次元組織を誘導することが困難となっている。生体外で三次元組織を構築する手法として光硬化性・光分解性のハイドロゲルを用いた手法が着目されている。申請者はこれまでに、可逆的に分解可能なアルギン酸カルシウムゲルを用いて、三次元培養環境を時空間的に制御する「三次元ダイナミックマイクロパターン共培養法」を提案し、この手法がマウス胚性幹(ES)細胞の心筋細胞への効率的分化誘導に有用なことを示してきた。この研究では細胞に対して不活性なアルギン酸カルシウムゲルを用いていたが、近年、申請者らは、アミノ基を有する様々な高分子と反応して光分解性ゲルを形成する光開裂型架橋剤を開発した。本研究提案では、この光分解性ゲルを用いることで、三次元培養環境を精密に時空間的に制御する「ダイナミック三次元培養環境制御法」を確立することを目的として研究を進めている。今年度は当該研究に使用する光開裂性架橋剤を合成し、ゼラチンやポリエチレングリコールといった様々なバイオマテリアルを基材として光分解性ゲルを調製した。この際に、様々な基材と架橋剤の濃度における光分解性ゲルの調製条件について検討し、ゲルの形成特性、ゲルの分解特性、細胞接着性といった観点から評価した。各種条件で調製した光分解性ゲルに対する光照射条件(照射強度、照射時間、照射パターン)の影響について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度まで我々は活性エステル型の光開裂性架橋剤を使用してきた。これは、近年我々の研究グループで独自に開発した化合物であり、アミノ基を有する種々の高分子と反応して光分解性ゲルを形成し、光照射に応答して分解する性質を持つ。一方、今年度になって、活性エステル型の光開裂性架橋剤を使用して細胞を光り分解性ゲルに内包する際に、光開裂性架橋剤の濃度の高い条件では細胞が死滅する現象が確認された。つまり、架橋密度の高い,固くて構造的に安定な光分解性ゲルの中に細胞を包埋することが困難であることが見いだされた。そこで、本年度はクリック反応によって架橋する光開裂性架橋剤を新たに合成して、光分解性ゲルの調製条件、分解条件、細胞接着条件について検討した。光開裂型架橋剤の合成は有機合成を専門とする分担研究者の高木が行った。これまでにゲル形成性、細胞接着性、光分解性において、本研究の用途に問題のない光分解性ゲルの調製条件、分解条件を見いだしている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本年度見いだした光分解性ゲルの調製条件、分解条件において、パターン血管の作製を試みる。当初の計画ではiPS細胞からの血管組織を分化誘導する予定であったが、iPS細胞由来の血管内皮細胞が市販されるなど、研究における分化誘導自体の意義は薄まってきている。このような状況変化を鑑み、来年度は、分化誘導済みのiPS細胞由来の血管内皮細胞や初代血管内皮細胞を用いてパターン化血管組織の構築を試みていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた活性エステル型光開裂性架橋剤の使用が困難であることが年度の途中で判明したため、新たにクリック架橋型光開裂性架橋剤を合成して研究を進めている。このため、iPS細胞といった高価な培地を使用する細胞実験のスタートが当初の予定より4ヶ月程遅れたため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰越となった額については、分化誘導済みのiPS細胞由来の血管内皮細胞や初代血管内皮細胞の購入や培養試薬類の購入費用に充当する予定である。
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