2015 Fiscal Year Research-status Report
Toxin-antitoxin分子基盤の解明と核酸編集技術・細胞応答制御への応用
Project/Area Number |
15K14241
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
横田 亜紀子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (20415764)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 核酸 / 酵素 / 分子認識 / バイオテクノロジー / 抗生物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、原核生物におけるプログラム細胞死を担うToxin-Antitoxin (TA)システムのうち、RNAを標的とし、特異的なRNAを切断するtoxin(RNAインターフェレンス)と、その標的RNAならびにantitoxinの相互作用に焦点を当て、それらの分子認識機構を原子レベルで考察し、獲得した知見を、核酸編集技術・細胞応答制御に応用することを目的とする。 当該年度においては、様々な生物種由来のTA 遺伝子群のうち、病原菌由来のtoxinと、難培養微生物由来toxinを複数選定し、それらがコードするtoxin蛋白質分子(RNAインターフェレンス)の発現・精製を行った。そして、調製したRNAインターフェレンスと、標準RNAを反応させ、次世代シークエンサーを用いて、RNAインターフェレンスの認識配列を同定することに成功した。多種多様なtoxinを取得し、RNAインターフェレンスライブラリーを構築することで、遺伝子工学ツール(RNA制限酵素)としての利用や、特異的な遺伝子発現の制御、さらにはRNA分子標的医薬品の開発などへの応用が期待される。今後はTAシステムに関する既存のデータや配列情報、変異解析などを組み合わせ、RNAインターフェレンスの特異性変換、高活性化、高安定化などに挑戦し、RNA切断レパートリーの拡充と高機能化に取り組む。また、現在、病原菌由来のtoxin(RNAインターフェレンス)を活性化させる(毒性を誘起する)細胞外致死因子候補を、迅速に取得できるようなスクリーニングシステムの構築に着手している。それと並行して、toxin/antitoxin/標的(認識)RNAについて、その機能や安定性、特異性・親和性の創出機構について多角的に解析し、細胞増殖促進/抑制因子に関する分子基盤的知見を獲得することで、将来的に新規抗生物質の開発などに繋げることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のH27年度の計画としては、「Ⅰ.Toxin(RNAインターフェレンス)、Antitoxin分子の選択と調製」と、「Ⅱ.RNAインターフェレンスの標的RNA配列の同定とライブラリー化」を予定していた。 Ⅰについては、様々な生物種由来のTA 遺伝子群のうち、toxinがRNAインターフェレンスの機能を有するtoxin-antitoxin 蛋白質ペアの中から、“病原菌由来TA;RNAインターフェレンスを活性化させる(毒性を誘起する)細胞外致死因子の探索”と“難培養微生物由来TA;毒性(成長阻害)抑制因子の探索”という視点から複数のターゲットを選定し、それらTAシステムについて、toxin分子を中心に、発現ベクターの作製を行い、各種蛋白質分子(RNAインターフェレンス)の培養・精製に成功した。 Ⅱについては、上記I で精製したRNAインターフェレンス(toxin)を使用して、標準RNAの切断反応を行った。そして、次世代シークエンサーでそのRNA切断部位を解読し、RNAインターフェレンスの認識配列を同定した。並行して任意の(特異的な)RNAに対する切断活性についても蛍光消光現象を用いて評価した。これら一連の実験・解析により、認識・切断配列が異なる複数種の新規RNAインターフェレンスの取得に成功した。現在は、RNAインターフェレンスライブラリーの拡充と新規RNAインターフェレンスの創製を視野に入れて、“特徴的な生物種由来あるいは特徴的な配列をコードするTAシステム”についても選定を行い、発現・精製の準備を進めているところである。 以上の進捗を踏まえ、(2)おおむね順調に進展している、という評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、これまでに(上記の【現在までの進捗状況】に記載の研究計画項目Ⅰ、Ⅱにおいて)取得したtoxin(RNAインターフェレンス)に対するantitoxin分子の取得と、そのantitoxin混在下におけるtoxinのRNA切断阻害反応の検証を進めるとともに、以下の2つの項目を中心に取り組むことを予定している。 1)TAシステムと標的RNAの分子認識機構の解明と、新規RNAインターフェレンスの設計 獲得したRNAインターフェレンス(toxin)、antitoxinと、同定した標的RNAについて、配列情報を比較検討し、リアルタイムPCRなどを利用した反応の速度論的解析や熱安定性測定なども実施し、個々の分子ならびに分子間相互作用に関して多角的かつ詳細に調査する。安定性や機能、特異性・親和性創出機構について原子レベルで考察することで、TAシステムによる細胞致死誘起のメカニズムの解明と、細胞増殖促進/抑制因子に関する分子基盤的な知見の獲得を目指す。また、これら一連の解析結果と、TA分子と標的RNAに関する既存のデータを融合し、必要に応じて変異解析も組み合わせることで、RNAインターフェレンスの特異性変換、高活性化、高安定化などを試行し、RNAインターフェレンスライブラリーの拡充を図る。 2)細胞外致死因子(Toxin活性化因子)の探索 これまでに獲得したTA分子の中から、病原菌由来のTAペアに焦点を絞り、toxinに対するantitoxinの結合(中和化・無毒化)を阻害し、toxinのRNAインターフェレンス活性を促進させうる細胞外致死因子(toxin活性化因子)を、ファージ提示法などを用いて探索する。それにより、病原菌に対する細胞外致死因子候補を、迅速・簡便に取得できるようなスクリーニング系を構築し、将来的に抗生物質の開発などにつなげることを目指す。
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Causes of Carryover |
当初、研究成果について、国内外の学会への参加や論文発表を予定していたものの、1年目でもあり、もう少しデータを集めてよりクオリティの高い発表した方が良い、と判断したため、海外旅費や英文校閲・投稿料・オープンアクセス代の支出が予定を下回ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額については、今年度に持ち越した成果発表のための学会参加費やそれに係る旅費、論文投稿に係る経費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)