2015 Fiscal Year Research-status Report
時間・空間スペクトル法CFDによる航空機の動安定微係数評価の研究
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15K14248
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
宮路 幸二 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60313467)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 数値流体力学 / 航空機力学 / 動安定 / 高次精度 / スペクトル法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、数値流体力学(CFD)を用いて、航空機の動安定微係数を高精度・高効率に求めることを目的としている。そのために、支配方程式を時間領域から周波数領域に書き換え、航空機の運動を規定した周期的強制振動により引き起こされる周期的流れ場を、時間スペクトル法により数値的に解く。空間の離散化には、領域分割区分スペクトル法の一つである流束再構築法(FR法)を用いる。FR法は近年発達しつつある非構造格子の高精度解法であり、複雑な航空機形状の解析が期待できるが、実用問題に対してはしばしば安定性が十分でない。そこで研究の初年度は、時間と空間の解法を別に扱い、従来の空間有限体積法に時間スペクトル法を取り入れること、また、従来の時間進行法でFR法の成熟を図ることとした。前者では、周波数領域の定式化を行い、実際にプログラム開発を行った。検証問題として、広く参照されている非定常振動単独翼の実験データを用い、得られる非定常空気力を比較した。更に、実航空機の解析を念頭に、主翼と尾翼からなる形状の強制振動下の流れを解析した。得られた流れ場から縦の動安定微係数を算出し、時間進行法との比較、また公開されている全機形状データと比較して、その有効性を示した。これらの成果は航空宇宙工学に関する平成28年度の国内、国際学会にて発表することになっている。また、平成28年度は上記の成果を基に、高次精度FR法との融合を進め、計算の信頼性を向上させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記した通り、時間進行法に代えて時間スペクトル法によって、飛翔体強制振動下の周期的非定常空気力の推算に成功した。計算時間の大幅な短縮化とともに、時間進行法における、解の時間刻み幅依存の問題が解消された。一方、従来の時間進行法を用いた高次精度FR法についても実用問題への適用を進めた。翼まわりの流れの剥離、乱流遷移、再付着という複雑な現象を、有限体積法CFDと比較して少ない格子点数(自由度)で解析できることを示した。また、特に粘性項について、FR法の修正関数がDGタイプでは数値不安定性が解消できない場合も、Gaタイプ(スペクトル差分法と等価)にすることで、安定性が向上する結果を得た。FR法に関する成果は、AIAA(アメリカ航空宇宙学会)Journalへの掲載が決定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、時間・空間の精度と効率を両立する航空機の動安定微係数取得法の開発のために、高次精度FR法CFDプログラムに時間スペクトル法を取り入れる。有限体積法に比べて多くの計算機メモリを要するが、特に時間スペクトル法ではモード次数倍の未知数(時間フーリエ係数)を解くために、使用メモリ軽減の工夫と計算高速化が必要である。陰的時間積分法の改良によりこれを実現する。一方で、実際に有限体積法に時間スペクトル法を適用した経験より、当初の定式化で想定するよりも、時間進行法の陰解法部分に対する変更は少なく済むことが分かり、解法毎・計算コード毎の本質的な難しさは少ないものと考える。解析対象は、動特性データ検証のための標準全機模型(Standard Dynamics Model)とする。特に、従来ほとんど解析実績の無い、航空機の横動特性に注目し、風洞実験との比較による検証を行う。
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Research Products
(5 results)