2015 Fiscal Year Research-status Report
レーザープラズマ中における分子解離選択抑制技術と火星エアロブレーキング環境試験
Project/Area Number |
15K14253
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
横田 久美子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (20252794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田川 雅人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10216806)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 火星大気 / 二酸化炭素 / 酸素原子 / エアロブレーキング |
Outline of Annual Research Achievements |
火星探査機はエアロブレーキング時に火星高層大気の主成分である原子状酸素と二酸化炭素の高エネルギー・高密度衝突に曝される。本研究では火星探査の基盤技術として、事前の宇宙材料試験が不可能な火星探査機用材料と火星高層大気との相互作用を地上で検証可能にする技術を世界に先駆けて開発することを目的としたものである。本技術により火星のみならず金星やタイタンなど太陽系の他の惑星(衛星)大気環境における高度な宇宙環境試験ならびに宇宙科学研究を可能とする技術展開が可能となると期待される。 プロジェクト1年目の平成27年度は低地球軌道での原子状酸素シミュレーションで使用されるレーザーデトネーション法に二酸化炭素と酸素を適用して、火星低軌道において高度と共に変化する酸素原子・二酸化炭素環境を再現する可能性について検証した。その結果、二酸化炭素はレーザープラズマ中で分解し純粋な二酸化炭素ビームは形成が困難であるが、エアロブレーキング時の衝突速度(エネルギー)は再現できることなどが示された。レーザープラズマ内での二酸化炭素分子の解離反応を抑制するため、マイクロ秒レベルでノズル内のガス組成を変化させることが可能になるシーケンシャルパフ方式の基本設計を行った。当初使用を予定していた米国製ソレノイドバルブが国内では入手が困難になっていることが判明したことから代替品の選定を行ったが、同等のシステムが存在しないため、他プロジェクトで開発中の変位拡大機構付のピエゾ素子を用いたパルスバルブシステムを流用するための設計変更を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
低地球軌道での原子状酸素シミュレーションで使用されるレーザーデトネーション装置(神戸大学現有)を用いて、二酸化炭素をターゲットガスとした場合のビーム形成特性について研究を行った。二酸化炭素をターゲットガスに用いた場合に形成される超熱ビームを四重極質量分析管を検出器として用いた飛行時間スペクトルで解析した結果、一酸化炭素、炭素、酸素原子、酸素分子がビーム中に混在している事、ビームの並進エネルギーによってその比率が変化することなどが明らかになった。四重極質量分析管のイオン源でのクラッキングパターンを実測値・文献値を元に推定し、サンプル位置でのビーム組成を推定したところ、サンプル位置においても二酸化炭素の70%程度は分解されていること、並進エネルギーを増大させると二酸化炭素の分解が促進されることが明らかになった。これはレーザープラズマ中での二酸化炭素の分解が原因であることから、レーザープラズマ中での二酸化炭素の分解を抑制しつつ、衝撃波加速を行う方法の開発が必要であることが明らかになった。上記の結果を受けてレーザープラズマ内での二酸化炭素分子の解離反応を抑制するため、マイクロ秒レベルでノズル内のガス組成を変化させることが可能になるシーケンシャルパフ方式パルスバルブシステムの基本設計を行った。当初使用を予定していた米国製ソレノイドバルブはモデルチェンジにともない国内では入手が困難になっていることが判明したことから代替品の選定を行ったが、同等のシステムが存在しないため、他プロジェクトで開発中の変位拡大機構付のピエゾ素子を用いたパルスバルブシステムを流用するための設計変更を行った。この設計変更によりプロジェクトの進捗が若干遅れることになった。現状では完成した1基のパルスバルブを用いて、その性能評価を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト最終年度である平成28年度には、昨年度に本プロジェクトで試作されたパルスバルブの評価を通して問題点を抽出・解決するとともに、これを2基用いたデュアルガスシーケンシャルパフ用ノズルシステムを実現する。PSV基本システムの変更にともなって、変更拡大機構付ピエゾシステムを用いたシングルPSV単独でのビーム形成特性を評価したのち、PSVドライブ用電源の性能と価格のバランスを考慮しつつダブルPSVシステムを完成させ、ターゲットガスの解離反応を抑制する可能性について評価する。実験的にはパルスバルブ動作タイミング、レーザー照射タイミング等を調整することによりノズル内でのデトネーション伝播特性を制御することが可能かどうかを検証する。さらに、極端紫外線解析と飛行時間スペクトル解析を併用することによりプラズマ内での多価イオン形成、イオン分子衝突過程等について明らかにし、ターゲットガスの解離反応を抑制しつつ所定のエネルギーまで加速する条件等を明らかにすることを計画している。
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Causes of Carryover |
シーケンシャルパフシステムに使用するパルスバルブを米国製IOTA ONEから他プロジェクトで開発中の変位拡大機構付のピエゾ素子を用いたパルスバルブシステムに変更した。IOTA ONEの購入を中止したことにより平成27年度予算の使用額が一時的に減少した。さらに設計変更に伴い部品発注スケジュールが変更になり関連する予算執行が後ろ倒しになったことが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
パルスバルブを米国製の既製品(IOTA ONE)から自家設計に切り替えたことでパルスバルブ本体の評価項目が増加した。IOTA ONEの購入予算は今後必要となるそれら評価用機材の購入、ならびに自家設計パルスバルブ用の消耗部品・シーケンシャルパフ用治具の試作・購入等に充当する予定である。
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[Journal Article] Hyperthermal atomic oxygen beam irradiation effect on the hydrogenated Si-doped DLC film2015
Author(s)
Kengo Kidena, Minami Endo, Hiroki Takamatsu, Ryo Imai, Masahito Niibe, Kumiko Yokota, Masahito Tagawa, Yuichi Furuyama, Keiji Komatsu, Hidetoshi Saitoh, Kazuhiko Kanda
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Journal Title
Trans. Mat. Res. Soc. Japan
Volume: 40
Pages: 353-358
Peer Reviewed
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