2015 Fiscal Year Research-status Report
高集積植物を用いた亜鉛・カドミウム含有坑廃水処理法の開発
Project/Area Number |
15K14273
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
井上 千弘 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (30271878)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハクサンハタザオ / カドミウム / 亜鉛 / 坑廃水処理 / 連続処理 / 高集積植物 / 環境基準 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではハクサンハタザオを利用した新たな亜鉛、カドミウム含有坑廃水の処理方法を提案することを目的としている。本年度は亜鉛とカドミウムの高集積植物であるハクサンハタザオの水耕栽培系を用い、亜鉛・カドミウム共存下での両元素の吸収挙動の解明と、水耕栽培方式による坑廃水の水質浄化についての実証を行った。亜鉛とカドミウムを含む溶液を用いた回分吸収試験において、0から2mg/Lの範囲の亜鉛が共存しても0.005 mg/Lの濃度に設定したカドミウムの優先的な吸収が生じ、その吸収速度は一次反応で整理され、亜鉛濃度には依存せず、また速度定数はほぼ一定であることが示された。自然界では一般に亜鉛はカドミウムの100倍のオーダーで存在しているが、そのような状況においても亜鉛よりカドミウムが優先的に吸収除去できていることから、ハクサンハタザオを用いたプロセスの実用性は高いと評価できる。また山形県内の休廃止鉱山から流出する坑廃水をベースにして作成した模擬坑廃水(カドミウム濃度:0.005,0.01,0.02 mg/Lの3水準、亜鉛濃度はいずれも1 mg/L)を用いて連続吸収試験を行ったところ、平均滞在時間の2倍程度の時間が経過したところでほぼ定常状態に達し、その時点でのカドミウム濃度は0.0015 mg/L以下となっており、カドミウムの水質環境基準値の0.003 mg/Lを十分に下回るものであった。この結果を基に試算すると、毎時1000Lの流量の坑廃水を処理するためには、10m×25mで深さ0.2mの水槽を用いれば良いことになり、坑廃水処理プロセス設計のためのひとつの目安を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画では28年度に予定していた連続試験の一部を27年度中に実施し、またその結果に基づき処理プロセス設計の見通しを示すなど、当初計画を大きく上回るペースで研究を実施している。それらの成果としてすでにプロセス設計の目安が示されており、28年度に実施される試験での目標値も明確となっている。これらの事から、当初計画以上に研究が進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は以下の4項目を中心に研究を進める予定である。 ①回分試験による亜鉛・カドミウムの吸収を阻害する成分の解明 ②連続試験による坑廃水の水質浄化についての実証 ③坑廃水処理プラントの基本設計の実施 ④植物体中に集積された亜鉛とカドミウムの再生資源としての評価 研究全体としては予定を上回るペースで進捗しているが、まだ学術論文の公表が少ないため、その作成に精力的に取り組む。
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