2017 Fiscal Year Research-status Report
パルス高出力リコネクション加熱を用いたトカマク点火実験
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15K14279
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野 靖 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30214191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井 通暁 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00324799)
田辺 博士 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (30726013)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 磁気リコネクション / プラズマ合体 / イオン加熱 / 球状トカマク / アルファ加熱 / アウトフロー / ショック / 電子加熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
32×10点に高精細化した2 次元イオン温度計測を小型・高磁場のトカマク合体に適用してリコネクション加熱を最大にする手法とメカニズムを解明できた。 ① リコネクション加熱最大化のキーは,電流シートをイオンラーマ半径程度まで圧縮して高速リコネクションをオンすることで,イオンのメアンダリング運動,さらにLH不安定とドリフトキンク不安定の誘起により電流シートは大きな異常抵抗を得るため,ポロイダル磁気圧だけでアウトフロー速度,即ち加熱パワーが決まり,ガイド(トロイダル)磁場への依存性がなくなる点がTS-3合体実験と協力中の核融合科学研究所堀内らの粒子シミュレーションの双方で判明した。この条件でリコネクション加熱が最大化され,再結合磁場=ポロイダル磁場の2乗に比例するイオン加熱エネルギーが得られる。 ② リコネクション加熱によるイオン熱エネルギーへのエネルギー変換は,ポロイダル磁気エネルギーの40-50%と判明した。2つのトカマク合体時,ポロイダル磁束は保存するが,電流分布をあまり変えずに1つ分のポロイダル磁気エネルギーが変換されることを意味しており,詳細な理論解釈を模索中である。 ③ リコネクション加熱は,実験的にはイオン加熱が電子加熱の5倍から10倍であることが判明した。スラブモデルを用いた粒子シミュレーションではその比が2倍程度であるものもあり,一見,不一致であるが,軽い電子が先行加速されてリコネクション下流に負の静電ポテンシャルを形成する際,その範囲がスラブモデル境界を超えることから小さめの値になると考えられる 以上の成果は,アジア太平洋物理学会年会の基調講演等の招待講演11件,IAEA Fusion Energy 2018の日本代表論文にも4件選定され,粒子シミュレーションはPhysics of Plasmas論文のEditor's Pickとなり,内外より評価されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
軌道にのった高磁場リコネクション加熱実験は,本年度,再結合磁場の2乗に比例する加熱スケーリング則の確認の先にあるメカニズムの解明に成功した。即ち,合体トカマクが電流シート幅をラーマ半径程度まで圧縮して得られる高い異常抵抗の発生による高速リコネクションによって,ポロイダルアルベーン速度程度のアウトフローとその熱化によって再結合(ポロイダル)磁場のみによるスケーリング則が得られることを見出した。スケーリングが再結合(ポロイダル)磁場のみにより,ガイド(トロイダル)磁場によらない理由がはじめて説明できたことは,本研究の本質に迫る大きな進展と言える。 スケーリング則のメカニズム解明,および,リコネクション加熱単独で核融合炉を点火する提案は内外の注目を集め,第1回アジア太平洋物理学会年会の基調講演となった他,IPELS国際会議等の11件の招待講演,IAEA Fusion Energy 2018会議への日本代表論文への採択も4件に達し,高い評価を得ることができた。 特筆すべき点は,このリコネクション加熱による核融合炉点火は英国のベンチャー企業Tokamak Energy社の主プロジェクトST-40実験に採用され,東京大学が協力して実験をプラン・技術支援し,実際に1月に実験をスタートしたことである。キーとなるイオン温度計測も東京大学が担当しており,実用化に向けてインパクトのある新しい展開につながった。 以上,リコネクション加熱による核融合炉点火研究は当初予想を超える大きな進展が複数あり,計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
合体実験の高磁場化と2次元計測を用いたこれまでの実験結果を受けて,再結合磁場の2乗に比例するイオン加熱エネルギーが得られるメカニズムが概ね解明できたので,まず,予定される招待講演や論文投稿を完了する予定である。具体的には,電流シート圧縮による高速リコネクションのアウトフローがほぼポロイダル磁場だけで決められ,ポロイダル磁場の2乗に比例するスケーリングにつながる一連の物理機構について,核融合研究の中心会議であるIAEA Fusion Energy Conference(平成30年10月)で日本代表論文,ICPP国際会議や第2回アジア太平洋物理学会年会の招待講演に選定されたので,実験と理論が連携して期待に応える。 また,追加実験として,電子が先行加速されて負ポテンシャルの井戸を形成する詳細な運動論的メカニズムに焦点を合わせ,プローブ計測の制約の範囲での静電ポテンシャル分布計測,さらに電子温度・ポテンシャルに影響しない非接触のトムソン散乱計測の温度異方性計測を行う予定である。特に電子温度はX点やその先に延びるセパラトリクスでピークする謎の多い現象が見られ,トムソン散乱計測の空間分解能も3倍に高精細化を進め,追加実験に備えている。 本研究のリコネクション加熱による核融合点火のアイデアが英国のベンチャー企業Tokamak Energy社の資金量豊富な合体実験:ST-40に採用され,我々もadviser, 協力者として既に高精細イオン温度計測を移設して協力をはじめている。スケーリングデータを拡充する意味からも,並行して加熱実験を進めていく。東大の現状予算の小型コイルでは1keV程度のイオン加熱が得られる磁場で破断の危険にさらされ,既に2個破断しているため,実験の最後にチャンピオンデータを記録する高磁場加熱実験を行うとともに,ST-40を積極的に利用した高磁場加熱実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
電子加熱が当初予想より急峻にX点にピークすることを見出し,磁力線に垂直な成分の加熱がキーとなることを粒子シミュレーションで予測して反響を呼んだため,トムソン散乱計測の空間分解能を3倍に高め,追加の2成分計測を完了して,焦点のイオン加熱を引き起こす電子による負ポテンシャル井戸の先行形成の物理を更に深める必要がある。また,得られた成果を核融合分野で中心となるIAEA Fusion Energy Conference(平成30年10月)で発表し,論文投稿を完了する必要がある。
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Research Products
(34 results)
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[Journal Article] Effects of Reconnection Downstream Conditions on Electron Parallel Acceleration during Merging Start-up of Spherical Tokamak2018
Author(s)
M. Inomoto, T. Ushiki, X. Guo, T. Sugawara, K. Kondo, T. Mihara, Y. Minami, Y. Inai, R. Yanai, Y. Takahata, H. Tanabe, Y. Ono, A. Sanpei, S. Kamio
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Journal Title
Fusion Energy 2018
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
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[Journal Article] Investigation of merging/reconnection heating during solenoid-free startup of plasmas in the MAST Spherical Tokamak2017
Author(s)
H. Tanabe, T. Yamada, T. Watanabe, K. Gi, M. Inomoto, R. Imazawa, M. Gryaznevich, R. Scannell, N. J. Conway, C. Michael, B. Crowley, I. Fitzgerald, A. Meakins, N. Hawkes, K. G. McClements, J. Harrison, T. O'Gorman, C. Z. Cheng, Y. Ono and The MAST Team
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Journal Title
Nuclear Fusion
Volume: 57
Pages: 56037
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Recent progress of magnetic reconnection research in the MAST spherical tokamak2017
Author(s)
Hiroshi Tanabe, Takuma Yamada , Takenori G Watanabe , Keii Gi , Michiaki Inomoto , Ryota Imazawa , Mikhail P Gryaznevich , Clive Michael , Brandan Crowley , Neil J Conway , Rory Scannell , Chio Z. (Frank) Cheng , Yasushi Ono , the MAST team
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Journal Title
Physics of Plasmas
Volume: 24
Pages: 56108
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] Fine structure formation of high field reconnection experiment in MAST and Univ. Tokyo2017
Author(s)
H. Tanabe, T. Yamada, T. Watanabe, K. Gi, H. Koike, A. Kuwahata, H. Yamanaka, K. Kimura, M. Narita, M. Inomoto, R. Imazawa, M. Gryaznevich, R. Scannell, N. Conway, T. O'Gorman, K. G. McClements, C. Z. Cheng, Y. Ono and the MAST team
Organizer
MR2017 Conference
Int'l Joint Research / Invited
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