2015 Fiscal Year Research-status Report
吸着式冷凍機のための革新的吸着材一体型熱交換素子の構築
Project/Area Number |
15K14297
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
長野 克則 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80208032)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 吸着材 / 吸着式ヒートポンプ / 低温排熱 / メソポーラス / 熱交換器 |
Outline of Annual Research Achievements |
80度以下の低温廃熱や太陽集熱器による温水を利用して,7~15度の冷熱を取り出すことが出来る吸着式ヒートポンプ(AHP)が,省エネルギーの観点から注目されている.しかし吸着材などの価格も高く,さらなる性能向上やコストダウンが求められている.これまでの研究で、我々は低価格で化学的安定性の高い天然メソポーラス材料である稚内層珪質頁岩(WSS)を用いた吸着材がAHPに適用できることを見出した.本研究では、塩化リチウム担持WSSを用い、伝熱性能と水蒸気吸脱着速度を高めた革新的一体型熱交換器を開発する. 最初に塩化リチウム担持WSSについて、真空下でのTG/DTAを用いた水蒸気の吸着-脱着(再生)特性試験を行い、20wt%程度の塩化リチウム担持量でも十分な性能が得られることが分かった。また熱伝導性を高めるため、粉砕したアルミ繊維を混合することで、熱伝導性が高まることを、真空下での顕微サーモカメラによって確認した。 次に吸着剤を充填した熱交換器(150×120×15 mm、体積0.28L)を試作し、冷熱取り出し性能試験を行った。得られた熱交換器の吸着材の充填量は300~500g/L程度となった。 33wt%アルミ繊維-13.5wt%LiCl担持-53.5wt%WSSを充填した熱交換器について、再生5分、吸着5分のサイクルにおける冷熱取り出し試験を行った。その結果、80度の再生条件において、熱交換機体積あたりの冷熱取り出し量(VCP)は、200 W/L以上、COPで0.3が得られることが分かった。さらに再生温度を60~85 度まで変化させたときのVCPは140 W/Lから280 W/Lまで増加したが、再生熱量に対する冷熱量(COP)は大きく変化せず0.28程度であった。今後は、再生時の凝縮速度や蒸発速度の改善、再生-吸着サイクルの調整を行い、さらなるCOP向上を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題は、塩担持サブミクロン頁岩を用い、伝熱性能と水蒸気吸脱着速度を高めた革新的一体型熱交換器を開発することである。 開発のスケジュールとしては、平成27年度には、「マイクロチャンネル流路を用いたアルミ製熱交換器への吸着剤充填方法の確立」、および「熱伝導性と水蒸気吸着速度の向上」について検討するとともに、平成28年度は、平成27年度で取り組んだ課題について、さらなる性能向上について検討を進めるとともに、「吸着―再生の繰り返しに対する耐久性と耐腐食性」について進める予定である。 平成27年度、アルミ繊維を配合することによる熱伝導性の改善効果について、顕微サーモカメラを用いた真空下での熱伝導速度の向上ついて視覚的に確認するとともに、真空下での熱伝導率測定装置を構築し、アルミ繊維の配合による熱伝導率の向上を確認できた。 また、吸着剤を充填した小型熱交換器の冷熱取り出し能力を評価するための試験装置を試作し、既存の吸着剤と比べても遜色ない十分な性能が確保出来ることを確認出来た。今後は、さらなる性能向上について検討を進めるとともに、吸着-再生の繰り返しに対する安定性や吸着剤の劣化、塩化リチウムの熱交換器に対する腐食について検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、吸着剤へ配合する金属繊維の配合量や金属繊維径などの検討を進めるとともに、吸着材の充填量や充填方法などの改善を行うことで、伝熱性能と水蒸気吸脱着速度を高めた革新的一体型熱交換器を開発する。 さらに吸着ー再生の繰り返し試験による耐久性や吸着剤の劣化、塩化リチウムによる熱交換器の腐食などについて検討する。腐食については、アルミ製熱交換器表面に、テフロンやエポキシなどの樹脂塗装などを施したものについて検討を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度は顕微サーモカメラなどの購入の予定を進めていたが、既存のサーモカメラの改良により、本研究で必要な解像度及び結果を得ることができたため、熱交換器の熱伝導率評価や小型熱交換器の温水による再生などに使用可能な冷温水が供給可能な循環恒温槽を購入した。このため、想定していた物品費よりも安価な執行額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、熱交換器の冷熱取り出し性能評価装置や、冷水ー温水の自動供給システムを構築し、繰り返しの耐久試験を進めていく。これらの試験装置のための必要物品の購入に予算を使用する。
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Research Products
(5 results)