2015 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化を利用したエネルギー・エフィシェント・マテリアルの創製
Project/Area Number |
15K14301
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉田 隆 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20314049)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電気電子材料 / 超伝導工学 / 熱電変換材料 / 機能性材料 / 結晶配向 |
Outline of Annual Research Achievements |
機能性薄膜は、「自己組織化を利用したエネルギー・エフィシェント・マテリアル」の開発により、基材と薄膜の界面制御や薄膜内部の粒子間の粒界制御が可能となる。そのため、界面特性や粒界特性の性能の向上や高度化を図り、 材料固有の性能を最大限発揮する技術の確立するともに、自己組織成長法などのような新たな性能効果を模索することが重要である。 本研究では高性能な熱電変換材料を用いた単結晶基板上などにおける厚膜作成技術、特に液層を用いた結晶配向化技術の構築する。高性能熱電変換材料と期待されるSnSe単結晶は、結晶のb軸方向のみにおいて923 Kで高い無次元性能指数ZTb=2.6を示すことが報告されている。しかし、SnSeは結晶構造に由来する、熱電特性の異方性を有しているため、応用上単結晶SnSeの作製が必要となる。 本年度は単結晶作製方法として、ブリッジマン法よりもより簡便な温度勾配法による結晶育成を試みた。温度勾配法は電気炉も試料も固定した状態で、炉内の温度勾配を利用して過冷度を与え結晶化させる手法である。本年度はより簡便な二重管封入式の温度勾配法を開発し、SnSe単結晶の作製を試みた。さらに、種々の作製条件が結晶性に与える影響について検討した。SnSeの回折ピークの他には基板のMgOの回折ピークしか見られず単相のSnSe膜が得られた。またSnSeの回折ピークに注目すると、SnSe(h00)面が強く配向していることがわかる。さらに、ラウエ評価から融液成長が促進して単結晶に近づいたことも観察された。さらに、基板界面からの自己成長を促進するため、基板界面にSnSeの種膜の作製などの予備検討も検討した。各種基板を用いることにより基板上のエネルギー・エフィシェント・マテリアルの自己成長機構が明らかになると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱電変換材料として、変換効率が高いことが報告されたSnSeに注目した。しかし、SnSeは結晶構造に由来する熱電特性の異方性を有しているため応用上単結晶又は配向薄膜の作製が必要となる。まず、液層成長を用いたSnSe単結晶及び配向薄膜を作製することを目的とした。試験管底部に単結晶基板(MgO, SrTiO3, CaF2, Al2O3)を種結晶として設置し、内部に粉末状SnSeを充填した。Se気化を抑えるため試験管内をSe飽和状態とするため粉末状SnSeの上にSeを少量敷いた。その後温度分布を計測した管状電気炉を地面と垂直となるように置いた。結晶成長における駆動力を大きくするため温度勾配が最も大きくなる位置に試験管を設置し、SnSeを溶融凝固させた。各種成膜条件で検討を行った結果、SnSe配向条件の構築が図れた。一方、MgOステップ基板とSTOステップ基板を用いてナノロッドの分布制御に関する研究を進めている。基板オフカット、熱処理してステップ作製、ナノロッドの分布制御の順で検討を行った結果、7°オフカット基板を用いてテラス幅50-80 nm程度で直線的なステップを作製する条件を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、熱電変換材料及び酸化物ナノロッドなどの自己成長に関する検討を行っている。熱電変換材料に関しては、今度気相法を用いた熱電変換材料の条件探索を行い、金属基板上の熱電変換材料の作製に着手する予定である。さらに酸化物ナノロッドなどの自己成長に関しては、ナノロッドの成長に関して、表面観察及び微細組織観察を検討して、自己組織化を利用したエネルギー・エフィシェント・マテリアルに関する検討を深める予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は液相法を用いた自己成長膜の検討を優先して検討を進めたため、金属基板上に気相法を用いて自己成長熱電薄膜の詳細な検討を次年度にしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
単結晶基板及び金属基板上に気相法を用いて自己成長熱電薄膜の詳細な検討を行うため。各種基板及びPLD法などの成膜手段に研究費を使用していく。
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