2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14310
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯野 雄一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40192471)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 最小回路 / 合成生物学 / 化学走性 / 行動 / シンタキシン |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫C.エレガンスは成虫で302個の神経細胞を持ち、その全神経回路の構造が分かっている。しかし、それぞれの行動にはこの一部だけが使われていると推定される。一部分を破壊するような手法では理解に限界がある。そこで、再構成実験を行うことを計画した。本研究では、線虫の全神経回路のうち、生存、前進後退運動、化学走性行動のそれぞれに必要な最小回路の再構成を目指した。 unc-64はシナプス小胞の放出に必要なシンタキシンをコードする唯一の遺伝子である。従って、unc-64遺伝子の機能を欠くと化学シナプスの伝達がすべてできなくなると考えられる。unc-64には種々の変異体があるが、完全に機能を欠失した変異体は致死である。この変異体をベースとして、細胞特異的にunc-64を発現させることにより神経回路を再構成することを目指した。まずunc-64のcDNAをRT-PCR法により取得した。unc-64には3つのアイソフォームがあると報告されているが、そのすべてを取得してunc-64変異体に導入し、いずれでも同等に機能回復をできることを確認したので、以下の実験ではunc-64aのcDNAを用いた。先行研究で頭部のコリン作動性神経に発現するunc-17プロモーターと頭部コマンド神経で発現するglr-1プロモーターとで多コピーでunc-64の致死性が回復するとされていたが、確かにこれを確認した。ただし、高発現しすぎると回復が悪いことがわかったので、以下MosSCI法でゲノムに一コピーで挿入することを開始した。unc-17, glr-1プロモーターに加え、GABA作動性神経に発現するunc-47プロモーター、体幹部の運動神経に発現するacr-2プロモーターでそれぞれunc-64aを発現するコンストラクトを作成し、ゲノムに1コピーで導入することにほぼ成功し、これらの組み合わせの作成を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予想はしていたのだが、多コピーでのunc-64 cDNAの導入では回復が不十分であることがわかったので一コピーでのゲノムへの導入とした。MosSCI法によるゲノムへの導入は効率が高くないので、ここでかなりの時間を要した。こういう段階であるので、成果発表には至ってない。
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Strategy for Future Research Activity |
作成されたunc-17p::unc-64, glr-1p::unc-64, unc-47p::unc-64, acr-2p::unc-64のゲノム挿入を確認する。これらはほとんどの場合、単独ではunc-64変異の致死性を回復しないので、野生型のバックグラウンドで作成している。今後これをさまざまな組み合わせで掛け合わせ、unc-64バックグラウンドに移すことで、どの組合わせでどの機能が回復するかを調べていく。
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Causes of Carryover |
研究経過欄に記載したように、ゲノムへの挿入に時間がかかり計画より遅れているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ゲノム挿入株の組み合わせを行うためにPCRとMultiNA(既存設備)を用いる。そのための合成DNAや試薬代として用いる。
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