2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K14329
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木下 暢暁 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (50391933)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 蛍光プローブ / 神経回路 / 神経シナプス / 可視化技術 / 細胞間接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑色蛍光蛋白質(GFP)は二分割されてもその部分断片同士が接触すると結合してGFPを再構成し、緑色蛍光を発することが知られている。そこで本研究ではGFPの前半部分を細胞の外側に提示する人工蛋白質と後半部分を提示する人工蛋白質を設計し、この2種類の分子をペアで使用することで細胞間接触を検出することを試みた。つまり、GFPの前半部分を提示する細胞と後半部分を提示する細胞が接触すると接触部分では両断片も接触できるので、GFPの再構成が起き、その緑色蛍光によって細胞間接触を検出しようというものである。またこれを神経系に応用すれば、神経細胞の接続点であるシナプスにおいてGFPの再構成が起こると考えられる。 平成27年度においては当初の計画の通り、神経接続の検出に適した蛋白質の分子構造の検討を主に行った。具体的には、(1)再構成し易いGFPの分断部位、(2)GFPの部分断片を効率良く細胞外に提示できる細胞膜相互作用部分、(3)GFPの再構成を促進する補助的な蛋白質相互作用配列の付加、について数十種類の分子を作製し評価検討を行った。その結果、GFPの分断部位は7、8番目のベーターシートの間が良いこと、細胞膜相互作用部分は膜貫通型よりもGPIアンカー型の方が良いこと、蛋白質相互作用配列としてロイシンジッパーを付加するとGFPシグナルが増強されること、などを見出した。 また基本構造の決定に加えて、GFPの色調変異体を応用することで再構成の組み合わせによって得られるシグナルの色が青色や黄色になるものを開発した。これによって複数種類の神経接続を同時に検出できるようになると考えられる。 これらの成果により、標的神経回路を効率良く、多次元に検出できる手法の基礎が確立できたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画どおり、平成27年度内に神経接続の検出を目的とした人工機能蛋白質の分子デザインの至適化をほぼ達成できたと考えられるため。具体的には、本研究課題以前に得られていたものに比べて数倍明るいものの開発に成功していること、GFPの色調変異体を応用し、緑色だけではなく青色や黄色を発するものを開発できたことが挙げられる。また多くの分子種とその組み合わせを検討する過程で再構成シグナルが接触境界面のみに見られるものだけではなく、接触した片方の細胞全体が光るもの、接触した両方の細胞全体が光るものも得られてきている。明るく、多色で、多様なシグナル分布特性を示す分子群を開発したことで、様々な神経接続パターンに対して合目的な可視化と解析ができる技術基盤を固めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの分子プローブの機能評価は主に培養細胞系で行っているが、平成28年度においては本技術の生体内中枢神経系への応用を進めて行く予定である。電気穿孔法やウイルスなどを用いて生体内の神経細胞に本分子プローブを発現させることにより、シナプスを介した神経接続の描出を目指す。また、より安定して分子プローブを発現させるため、遺伝子改変動物の作製も計画している。Cre-LoxPシステムなどの発現制御技術を取り入れることで発現時期と部位を限定し、解像度の高い情報の取得が可能な遺伝子改変を計画している。 具体的なテーマとしては視床―大脳皮質投射に注目している。この既知の投射について正しい神経接続シグナルを示すことで本分子プローブが生体内神経回路の可視化技術として有用かつ信頼できるものであることの証明とする。 また視床―大脳皮質投射では視床神経の投射を受けた大脳皮質神経細胞の形態が変化することが知られている。そこで本技術を用いた投射接続の時期部位の特定と細胞形態変化との相関の観察から、一連の現象への関与が推察される遺伝子群の機能評価をすることで、新たな生物学的知見を得ることも目標としている。
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