2016 Fiscal Year Research-status Report
体性感覚野ミニバレル領域の形態学的特徴が同領域の予想外の重要性を示唆する可能性
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15K14334
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
福田 孝一 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (50253414)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バレル野 / 体性感覚 / パルブアルブミン / ギャップ結合 / GABA |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年4月に起きた熊本地震により主要な研究機器がすべて破損し、研究の中断を余儀なくされた。しかし秋以降徐々に機器の更新がなされ、遅れを取り戻すべく精力的に研究を行い、以下の成果を得た。 ミニバレルの集まりがマウス体性感覚野で占める面積は、マクロバレルに匹敵する大きさであるが、通常の切片作成で用いられる冠状断などの方向では、ミニバレルのごく一部が検出されるにすぎない。そこで初年度から、脳の表面に平行な切片を作成する手法を採用したが、当初はミニバレル野に平行な方向を大体の見当で見定めて切片を作成した。そのため再現性の点で問題が生じたので、今年度はミニバレルの広がりをとらえるのに適した方向の空間的角度を決定することを試み、最適の角度を得た。これにより一枚の切片内に、これまでよりはるかに多くのミニバレルが含まれる組織標本を得た。また連続切片による三次元再構成も、個々のミニバレルの中心軸に沿った形で効率よく行うことができるようになった。 これと平行して、ミニバレル解析の対照となるマクロバレル内部において、GABA作動性ニューロンに関する未知の形態学的特徴を多数明らかにした。パルブアルブミン(PV)陽性ニューロンは大脳皮質GABAニューロンの最も主要なタイプであるが、細胞体の位置と樹状突起の広がりを基準に4タイプに分類できること、特に1型(細胞体がバレル内にあり、樹状突起もそのバレル内に限局する)が、PVニューロンの一般的特徴であるギャップ結合による樹状突起連結を、1型相互間では作らず別のタイプとのみ結合するという予想外の特徴を見いだした。他の3タイプも特徴的なギャップ結合連結を示し、これらの結果を論文に投稿中である。今年度明らかにした性質は、バレルの約1/3の体積内に2倍の密度で存在するミニバレル内PVニューロンでどのようになっているか、大変興味が持たれる所見と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度4月に発生した熊本地震のために、研究の中核をなす機器がすべて破損し、研究の実行にやむを得ず遅れが生じた。秋以降徐々に機器の更新がなされ、遅れをとりもどすべく精力的に研究を遂行した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた研究成果をもとに、ミニバレルの形態学的特徴をさらに詳しく追究する。ミニバレルのサイズと内部にあるニューロンの数に関する定量的データの詰めの解析を行うとともに、今年度マクロバレルで見いだしたパルブアルブミン陽性ニューロンの形態学的特徴が、よりサイズの小さいミニバレルにおいても同様に当てはまるのか、中でもバレル内に収まっている1型が小さなミニバレルでも存在しているのか、もしそうなら1型相互は排他的でギャップ結合連結を作らないという性質がやはり当てはまるのかという課題を追究する。ミニバレルニューロンの詳細な解析は、おそらくミニチュア洞毛と長い洞毛を使い分けている動物の行動に、形態学的基盤を与えうるものと考えられる。
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Causes of Carryover |
熊本地震により研究再開が遅れ、研究実施期間が大幅に短くなったため、研究費の使用が当初計画より若干少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度までの成果を受けて、次年度使用額を翌年度請求助成金と合わせ、研究遂行に使用する。
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Research Products
(1 results)