2015 Fiscal Year Research-status Report
神経選択的サイレンサーNRSF/RESTバリアントによる老化脳制御
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15K14352
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森 望 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (00130394)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経細胞 / ニューロン / 老化 / 加齢 / 酸化ストレス / ストレス耐性 / 神経保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、老若マウス脳での神経選択的サイレンサー因子NRSF/REST,およびその神経細胞特異的バリアントNRnV/ REST4の発現の比較については2ヶ月(8 wks)、ほぼ2年(100 wks)、2年半(120 wks)齢のマウスの凍結脳および還流固定した脳の切片でそれぞれの特異抗体での染色像を比較した。その結果、高齢マウス脳ではNRSFの発現が少なくとも海馬神経細胞で高いことが確認できた。海馬ほど顕著ではないが、大脳新皮質の神経細胞でも高齢マウスのほうが発現が高いことも確認できた。定量比較については十分な切片量をそろえて次年度に結論できるよう継続してゆく。 次に、NRSFの神経保護への効果を調べる目的で、Neuro2a細胞を用い、NRSF遺伝子導入したものとしないものとで、酸化ストレスをかけたあとでの生存率を比較した。その結果、NRSF遺伝子導入細胞は酸化ストレス耐性が上がる傾向にあることがわかった。その効果はNRSFでもNRnV(バリアント)でもほぼ同等のように思われた。 今後、このストレス耐性がどのようなメカニズムで獲得されたのか解明する必要がある。また、NRSF, NRnVが酸化ストレスだけでなく、低酸素ストレスや凝集体ストレスなど、老化神経においておこりうる他のストレス状態においても保護効果があるかどうかを調べていく必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老化脳におけるNRSFの発現変動についても増加傾向がほぼ確実になった。あた、老化神経細胞においてNRSFの発現レベルが高くなっていることの意義について、酸化ストレスへの耐性を付与するものと理解できるようになってきた。現在、酸化ストレスのレベルの比較、また他のタイプのストレスへの効果について比較を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
老若脳での定量比較とストレス耐性については、ほぼ予定通り進行している。ただし、全長のNRSFとそのC末のない神経特異的バリアントNRnVとの比較をしてみると、当初は両者に違う機能性を想定していたが、今のところ酸化ストレス耐性効果については両者にほとんど違いがない。このことはおそらくは転写制御ではない何らかのメカニズムでストレス耐性が進んでいることを示唆している。また、その機能ドメインはN末方向にあることも想像できる。今後は、これを意識しつつ、ストレス耐性のメカニズムについて調べていくこととする。
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Causes of Carryover |
細胞培養や分子生物学的実験に必要な消耗品については教室内に備蓄していたストックでで多くを賄うことができたが、学会参加のための旅費や参加費等はすべてこの挑戦的萌芽研究から支出した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
このサイレンサー因子の研究の発展系として申請した別の研究費が不採択となったので、実験消耗品のほとんどを平成28年度はこの研究費から支出しなければならないので、平成27年度分をセーブできたのは結果的に幸いとなった。多くを実験消耗品として使用し、一部は予定どおり学会発表のための旅費、参加費として使用する。
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